「員弁町シンボルタワー」を目指して──いなべ公園、静寂の緑に抱かれて ( 三重県いなべ市の旅 : 2025-03-30 )
いなべ公園・員弁町シンボルタワー
■ 歩いて見つけた“塔”の存在感
ねがね橋とねじり橋という、趣深い2つの橋を巡ったあと、私は次の目的地である「いなべ公園」へと足を進めました。
ねじり橋から北へと続く道を、ゆるやかな坂に沿って歩くことおよそ30分。静かな山あいの空気に包まれながら、自然と一体になるような気持ちで歩いていきます。
途中で出会ったのは、いなべ市のデザインマンホール。
その中央には、「員弁町シンボルタワー」が堂々と描かれていました。
まさに、これから目指す場所。その姿を思い浮かべるだけで、胸が高鳴ります。
さらに進むと、山の上にその塔の姿がくっきりと見えてきました。
遠目にもはっきり確認できるその存在感に、自然と足取りも軽くなります。
そこから先は、やや急な坂道を登ること約15分。ようやく、いなべ公園の入口に到着しました。
■ 圧巻の「塔」から望む員弁大池の絶景
いなべ公園は、員弁大池を中心に広がる自然豊かな公園で、敷地はなんと7.3ヘクタールにも及びます。
5つの広場、3つの橋、噴水や遊歩道も整備されており、訪れる人々にとって、思い思いの過ごし方ができる憩いの空間です。
休日ともなれば、家族連れや散歩を楽しむ人々で賑わいます。
本来であれば、公園内を端から端までゆっくり巡ってみたかったのですが、ここに至るまでの道中ですでにかなりの距離を歩いており、今回は「員弁町シンボルタワー」に的を絞って訪れることにしました。
公園内の小高い丘を登ること5〜6分、ついにその塔が目の前に現れました。
高さおよそ25メートルのこの塔は、五重塔を思わせる構造ながら、曲線を多用した独特のフォルムで、日本建築というよりは、中国的な意匠を感じさせます。
旧員弁町が「ふるさと創生1億円」事業の一環として建設したとのことですが、そのデザインの経緯や選定理由は公式な記録が見当たらず、謎に包まれています。ですが、それも含めてこの塔の魅力のひとつと言えるでしょう。
最上階である三階まで登ってみると、そこには息をのむような絶景が広がっていました。
エメラルドグリーンのように美しく光る員弁大池、市街地の広がり、遠くの山々まで、まるで一枚の絵画のような風景に心が奪われます。
静寂の中、ただ風の音と鳥の声だけが響く空間で、しばし時を忘れて景色に見入っていました。
■ 誰もがもっと訪れやすい公園になりますように
いなべ公園の魅力は、今回訪れた一角だけにとどまりません。さくら橋や員弁池神社など、対岸にも見どころが点在しており、次回はぜひ、公園全体を半日かけてじっくりと巡ってみたいと思わせてくれる場所でした。
そんな素晴らしい公園に、ひとつだけお願いしたいことがあります。それは「アクセスの改善」です。最寄りの「公園口」バス停は、公園の入口から7〜8分ほど山を下った位置にあり、歩くにはなかなかの負担があります。特に車を利用できない高齢者や観光客にとっては、行き帰りの坂道が大きなハードルになってしまいます。
園内にバス停がもう2か所ほど設置されるだけでも、訪れる人々の選択肢が広がり、公園の魅力をより多くの方に届けられるのではないでしょうか。そして、アクセスが向上すれば、公園周辺にカフェや休憩所など新たな施設も生まれ、地域全体がさらに活気づく可能性もあります。
静かな山あいにたたずむ、個性的な塔と広大な自然。
今回の旅では、いなべ市の新たな一面に出会い、心に残る風景と時間を過ごすことができました。
◆地図
〒511-0202 三重県いなべ市員弁町楚原