ねじり橋とめがね橋を巡る歴史と風景の散歩道 ( 三重県いなべ市の旅 : 2025-03-30 )
めがね橋とねじり橋
春の陽気に誘われて、三重県いなべ市へ小さな旅に出かけました。
スタート地点は、三岐鉄道北勢線の楚原(そはら)駅。
北勢線といえば、日本でも数少ないナローゲージ(軌間762mm)の鉄道として知られ、黄色い車体が特徴のレトロ可愛い列車です。
そんな愛らしい電車に見送られながら、のんびりとした徒歩旅がはじまりました。
楚原駅を出て、最初の立ち寄りスポットは、旧・県立員弁高等学校の校門。
現在は県立いなべ総合学園高等学校として活用されていますが、昔ながらの重厚な門構えがそのまま残されていて、時間の流れを感じることができます。
ひねりの美学「ねじり橋」との出会い
静かな住宅街を抜け、さらに10分ほど歩を進めると、風景は徐々に街並みから田園地帯へと変わっていきました。
振り返ると、そこに現れたのが「ねじり橋」。
これは江戸時代に築かれた農業用水「六把野井水(ろっぱのいすい)」に架かる橋で、正式には「ねじりまんぽ」と呼ばれる構造をもっています。
用水と橋が斜めに交差するため、橋の下部のコンクリートブロックがひねりを入れて積まれているという、非常に珍しい造りなのです。
現存するコンクリートブロック製の橋としては日本唯一ともいわれ、その貴重さに心を打たれます。
橋の下を実際に歩いてみると、そのねじれの構造が間近で観察でき、まるで時間の渦の中に足を踏み入れるような、不思議な感覚に包まれました。
何百年という歳月のなかで、人々の営みとともに存在してきた橋の佇まいには、どこか味わい深いものがあります。
アーチが魅せる風景美「めがね橋」
さらに田園地帯を抜けて歩いていくと、次に目に飛び込んできたのが「めがね橋」。
その名の通り、三連のアーチが眼鏡のように並んでいる美しい橋です。
全国には数多くの「眼鏡橋」が存在しますが、ここの特徴はなんといっても「コンクリートブロック製」であるという点。こちらも大変珍しく、北勢線沿線の中でも人気の撮影スポットとして知られています。
ねじり橋が「近くで見る味わい」なら、めがね橋は「遠くから眺める美しさ」が際立ちます。
田んぼの広がる風景の中にぽっかりと現れるアーチ橋。
その造形美には思わず足を止めて見入ってしまいました。
まるで風景の中に溶け込んだ美術品のようですね。
神社に残る昭和の記憶と海軍中将の痕跡
橋を堪能した後は、近くにある「下笠田八幡神社」と「護国神社」へ。
どちらも地域に根付いた小さな神社で、静謐な空気に包まれていました。
特に印象的だったのは、下笠田八幡神社の境内に掲げられていた砲弾と水雷缶。
砲弾には「至誠」と書かれた木の板、水雷缶には「通神」と記された板が取り付けられており、そのうちの水雷缶には小さく「海軍中将 和波豊一 書」の文字。そして、機雷の台座の裏側には「昭和十一年九月」の刻印が。
調べてみると、これらは地元の素封家が奉納したものであり、和波豊一中将(海軍兵学校32期卒)の名前が刻まれていることから、彼が現役を退いた記念に奉納したものと推測されます。
歴史を伝える静かな証人たちが、今も神社の片隅に佇んでいました。
今回の旅は、ただの「橋巡り」ではなく、地域の歴史や文化、人々の想いに触れる時間でもありました。
このあとは、北へと歩を進め「いなべ公園」へ。
その魅力については、また次のブログ記事にてたっぷりと綴りたいと思います。
つづく。
◆地図
〒511-0221 三重県いなべ市員弁町下笠田