みなとつるが山車会館――敦賀の魂が息づく、迫力の「やま」展示 ( 福井県敦賀市の旅 : 2025-07-03 )

 

みなとつるが山車会館(福井県敦賀市)

敦賀市立博物館をじっくり堪能したあと、すぐ隣にある「みなとつるが山車会館」へと足を運びました。


この地方では「山車(だし)」ではなく「山(やま)」と呼ぶのが伝統。敦賀の人々にとって祭りの象徴であり、誇りそのものです。
祭りの熱気と歴史を今に伝えるこの施設は、敦賀の文化を感じるうえで欠かせないスポットでした。

1997年開館とは思えないほど美しい館内

博物館通りを挟んで建つ山車会館は、1997年(平成9年)5月1日に開館。外観はモダンで清潔感があり、まるで近年リニューアルされたかのような雰囲気です。

ガラス張りのエントランスから中へ入ると、広々としたロビーが迎えてくれます。


ロビーの奥には「ウェルカムギャラリー」があり、祭りに関する資料や、戦国時代の甲冑などが展示されています。
この段階で、すでに心がわくわく。敦賀の歴史・祭り文化の深さに引き込まれるような導入部です。

スクリーンシアター――光と音が織りなす「祭りの瞬間」

そして、いよいよ館内のメインエリア「山車展示室」へ。
ここは3階まで吹き抜け構造になっており、巨大な山車をそのままの姿で展示できるよう設計されています。
入室すると同時に、スタッフの案内でスクリーンシアターが始まりました。

約15分間の上映では、「氣比神宮例大祭」の様子が大迫力の映像と音響で再現されます。
暗転した空間に太鼓の重低音が響き渡り、続いてスクリーンいっぱいに祭りの映像が映し出されると、観客席が一瞬で祭りの渦中に。
山車が練り歩く映像のクライマックスでは、照明が明るくなり、目の前の実物大の山車がライトアップされながらせり出してくる――まさに「体験する展示」です。

光、音、動き。そのすべてが完璧なタイミングで融合し、心の底から「おおっ」と声が出るほどの迫力でした。
これまで各地で山車展示を見てきましたが、この「みなとつるが山車会館」の演出は群を抜いて素晴らしい。
映像と実物展示が完全に一体化しており、祭りの熱気や人々の歓声まで聞こえてくるような臨場感です。

「つるがの山車」2階から見下ろす、圧巻のスケール

上映が終わると、照明が明るくなり、改めて巨大な山車の全貌が現れました。
当館の一番人気である『つるがの山車』は、氣比神宮例大祭で実際に巡行する山車を本物そのままに展示したもの。3階まで吹き抜けになった展示室を貫くようにそびえ立つ姿は、圧巻の一言です。

山車には、本物の甲冑をまとった武者人形や、精巧な能面が飾られています。
それらが合戦絵巻のように配置され、まるで戦国の戦場を再現したかのよう。近づいて見ると、金箔を施した飾り金具や繊細な彫刻の美しさに息を呑みました。

敦賀の山車は、単なる祭りの飾りではなく、職人たちの技と信仰、そして地域の誇りが結晶した芸術作品なのだと実感します。

展示室は、上階へと続く回廊式の通路が設けられており、2階から山車を見下ろすことができます。
上から眺めると、山車の構造がよくわかり、細部の装飾や人形の配置、彫刻の陰影まで堪能できます。

光が差し込む中、豪華な金具がきらめき、静止しているはずの山車が今にも動き出しそう。
下から見上げる迫力と、上から見渡す荘厳さ――両方の視点から楽しめるのが、この会館の大きな魅力です。

ふと耳を澄ますと、かすかに太鼓や笛の音が館内に流れていました。
展示でありながら、まるで祭りの余韻が今も漂っているかのような不思議な感覚でした。

別館で出会う、敦賀の歴史と文化の深み

山車展示を堪能した後は、会館の別館へ。
こちらには、敦賀城城主・大谷吉継に関する資料や、旧大和田銀行の金庫など、歴史的価値の高い展示が並んでいます。

大谷吉継といえば、関ヶ原の戦いで石田三成の盟友として散ったことで知られる武将。敦賀城主としてこの地を治めた彼の足跡を示す史料や模型が展示されており、敦賀の城下町としての側面を知ることができます。

さらに、旧大和田銀行の大金庫も見学可能。
分厚い鉄扉を開けると、かつての銀行時代の重厚な空気がそのまま残されており、まさに「敦賀の産業と文化の接点」を体感できる空間です。

歴史と祭り、産業と文化――それらが一つの館の中に凝縮されているのが、この山車会館の魅力だと感じました。

祭りを知らなくても楽しめる体験型ミュージアム

「山車」や「氣比神宮例大祭」に詳しくない人でも、間違いなく楽しめる施設です。
映像や音響による臨場感ある演出、立体的な展示、そして回廊式の見学導線。どれも訪れる人の興味を自然に引き出す工夫が施されています。

敦賀の人々が代々大切にしてきた「やま」への情熱が、ひしひしと伝わってくる場所。
訪問後には、祭りそのものを体験したような高揚感と、どこか温かい郷土愛の余韻が心に残りました。

地図

〒914-0062 福井県敦賀市相生町7−6

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