下呂温泉ぶらり散策記(1):約40年ぶり、子供の頃の記憶をたどって ( 岐阜県下呂市の旅 : 2025-06-29 )

 

下呂温泉(岐阜県下呂市)

子供の頃の記憶

2025年6月29日。私は約40年ぶりに下呂温泉を訪れました。
といっても、前回はまだ子供の頃。記憶は曖昧で、細かなことはほとんど残っていません。
ただ一つ、今も鮮明に覚えているのは、親戚一同で観光バスを貸し切り、川沿いのホテルに泊まったことです。夜、露天風呂に浸かりながら、川向こうを走る電車の灯りを眺めていたこと。それが唯一、心に焼き付いている下呂の風景でした。
ホテルの名前も思い出せず、それ以外の観光地の記憶もほとんどありません。だからこそ、今回の旅は「2度目」とはいえ、実質的には大人になって初めての訪問に近いものでした。40年前に触れたわずかな記憶を胸に、大人の視点で改めて下呂の街を歩いてみたい――そんな思いで、名古屋駅から特急ひだに乗り込みました。


名古屋から気軽に行ける温泉地

今回利用したのは、名古屋駅を9時39分に出発する特急ひだ5号。

高山本線を北上し、下呂駅まではおよそ1時間半の道のりです。日帰り旅行としてはちょうどよい距離で、「ふと思い立ったら出かけられる温泉地」としての魅力を感じます。

車窓の景色は、旅の大きな楽しみです。美濃太田駅ごろまでは、車窓の向こうに木曽川の流れが姿を現します。川のきらめきと並走する鉄路の風景は、鉄道旅ならではの醍醐味を感じさせます。やがて路線は木曽川を離れ、今度は飛騨川が寄り添うように走り始めます。

川沿いの町並みや緑濃い山々が次々と現れ、その表情は移ろいゆきます。渓谷と川面が織りなす風景に「次は途中下車して散策してみたい」と、新たな旅の候補地が心に刻まれます。こうして寄り道の想像が膨らむのも、鉄道の窓から眺める旅の大きな喜びです。


初めて降り立つ下呂駅

やがて列車は目的地の下呂駅に到着。

40年前は観光バスで直接ホテルに向かったため、この駅を利用するのは初めてのことです。ホームに降り立つと、木造風の駅舎が視界に入り、すぐに「歓迎 下呂温泉」と掲げられたモニュメント兼観光案内所が迎えてくれました。レトロな佇まいが旅情を漂わせ、温泉街への期待を高めます。

駅前広場には土産物店や飲食店が立ち並びます。帰りの列車を待つ間にも気軽に立ち寄れるので、日帰り旅の強い味方となるでしょう。名古屋からのアクセスだけでなく、駅前の利便性まで考えると、下呂温泉が「気軽に訪れられる日本三名泉」である理由がよくわかります。


温泉街へ歩き出す

改札を出て北へ数分歩くと、高架下を抜ける小道が現れます。そこをくぐれば、飛騨川沿いに広がる温泉街のエリアに出ます。

川に近づくほどに旅館やホテルが姿を現し、土産店や飲食店も増えてきます。
途中、ひときわ目を引く巨大な招き猫のオブジェ「LUCKY」に出会いました。道行く人が足を止めて写真を撮る光景が印象的で、温泉街の遊び心を感じさせてくれます。こうした小さな仕掛けも、旅人の気分を盛り上げる要素のひとつです。


下呂大橋からの眺め

やがて飛騨川に架かる「下呂大橋」に到着。橋の上からは、堂々と流れる川の姿と、その両岸に広がる温泉街、そして背後にそびえる山々が一望できます。川と山と街が溶け合う景観は、まさに温泉地の醍醐味。大きく息を吸い込むと、澄んだ空気が身体の奥まで届くようです。

ふと、40年前の記憶がよみがえります。露天風呂に浸かりながら、川沿いに走る列車を眺めたあの夜。幼い私の心に刻まれたのは、温泉そのものよりも、電車の灯りでした。今、橋の上から川面を見下ろしながら、あの時の情景と今の景色とを重ね合わせます。子供の頃に見たあの光景は、きっとこの飛騨川沿いのどこかにあったのだろう――そう思うと、時を越えて旅がつながる感覚に包まれました。


川沿いの噴泉池

橋から下を覗くと、有名な「噴泉池」が見えます。

飛騨川のほとりに湧き出す天然の露天風呂で、かつては全身浴も可能だったそうですが、現在は足湯として整備されています。
川のせせらぎを聞きながら温泉に足を浸す――その開放感は格別です。ただ、この日は真夏の陽射しが強く、さすがに足湯に浸かる観光客はまばらでした。けれど秋や冬に訪れれば、川霧と温泉の湯気が相まって、幻想的な光景が広がるに違いありません。季節によってまったく違う表情を見せてくれる場所だと想像しました。


今回は西側散策まで

今回の散策は、下呂駅から飛騨川の西側を歩き、下呂大橋を渡る手前まで。川と山に抱かれた風景を眺め、子供の頃の曖昧な記憶と今の感覚を重ね合わせながら歩く時間は、想像以上に豊かなものでした。

次回は下呂大橋を渡り、飛騨川の東側に広がる賑やかな温泉街を散策します。そして最後には、もっとも心に残った「下呂温泉合掌村」の様子もお伝えする予定です。お楽しみに!

地図・アクセス

〒509-2206 岐阜県下呂市幸田1390

 

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