下呂温泉 合掌村ぶらり散策記(1):合掌の里で出会う、懐かしさと涼やかな森の風 ( 岐阜県下呂市の旅 : 2025-06-29 )
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下呂温泉 合掌村(岐阜県下呂市)
下呂温泉街の中心を抜け、飛騨川に沿って北へ歩いていくと、やがて山あいに見えてくるのが「下呂温泉合掌村」です。
この合掌村は、白川郷などから移築された合掌造りの建物が点在する観光施設で、飛騨地方の昔ながらの暮らしや文化を体感できる場所として人気があります。
温泉街の賑わいからほんの15分ほど歩いただけで、すっかり雰囲気は変わります。川の流れの音が遠ざかり、代わりに鳥の声や木々を渡る風の音が響き、次第に「山の空気」に包まれていくのが分かります。道のりの途中、緩やかな坂道を上るにつれて、下呂の温泉街を見下ろすような景色も現れ、少しずつ気持ちが高まっていきました。
受付・売店、そして有名人のサインが並ぶ休憩処
村の入り口にある「受付・売店」でチケットを購入し、まずは建物内を見学します。
木のぬくもりを感じる建物の中には、飛騨の名産品やお土産が並び、観光地らしい賑やかさ。特に、下呂温泉の源泉を使った入浴剤や、飛騨牛を使ったレトルトカレー、そして地元作家による木工細工など、見ているだけで楽しくなります。
その奥にある「休憩処」にも立ち寄ってみました。こちらは、観光客がひと休みできるスペースで、壁には訪れた有名人のサインがずらり。テレビ番組や観光特集で紹介されたことも多い場所で、地元の人たちがこの合掌村を誇りに思っていることが伝わってきます。窓の外からは、合掌屋根の姿が見え、まるで昔話の世界に迷い込んだような気分でした。
国登録有形文化財「旧岩崎家」と、かつての影絵劇場「しらさぎ座」
次に向かったのは、「民俗資料館(旧岩崎家)」。
この建物は、国登録有形文化財に指定されている貴重な合掌造りで、内部には当時の生活道具や民具、農機具などが展示されています。入ると、独特の木の香りが漂い、外の暑さを忘れるような涼しさがありました。
2階へ上がる階段を登ると、茅葺き屋根の内側の構造が間近に見え、太い梁と縄で組まれた力強い造りに感動します。
窓から差し込む光が茅の隙間を柔らかく照らし、昔の人々の知恵と手仕事の確かさを感じるひとときでした。
また、この資料館ではおみやげも販売されており、手作りの民芸品やしおりなど、温もりのある品が並んでいました。
通路挟んで、その向かいにある「しらさぎ座」は、平成20年から9年間にわたり、劇団かかし座による影絵劇が上演されていた常設劇場です。
今は公演を終え、静かな展示スペースとなっていますが、当時は全国でも珍しい影絵専門の劇場として話題を集めていました。テレビで取り上げられていた頃のことを思い出しながら、「生で観たかったな」と少し名残惜しい気持ちになりました。
合掌茶屋と河原の鴨たち
資料館をあとにし、合掌造りの屋根を背景に建つ「合掌茶屋」へ。
店内には入りませんでしたが、外から眺めるだけでも風情があります。木の格子戸越しに見える灯りや、軒先に吊るされた暖簾が、まるで古い時代の食堂のようで、時間がゆっくりと流れているようでした。
すぐそばの河原では、鴨の夫婦が日陰に身を寄せ、仲むつまじく過ごしている姿が見られました。川面を渡る風が心地よく、歩き疲れた足も自然と軽くなります。こうした小さな風景に、旅の一番の癒しを感じる瞬間があります。
飛騨高椅神社と歳時記の森
さらに奥へと進むと、小高い場所に「飛騨高椅神社」が現れます。
石段を上ると、こぢんまりとした社殿があり、木立の中に静かに佇んでいました。旅の安全と健康を祈り、手を合わせます。
神社の隣には「歳時記の森」へと続く地下道があり、ここを抜けて向こう側の高台へ。
先ほどまでの合掌の里よりもさらに自然が深く、木漏れ日が差す道を歩くと、まるで別世界に来たかのようです。水車小屋のあたりでは、水の音と鳥の声が重なり合い、涼やかな風が吹き抜けていました。ここから見下ろす景色は格別で、合掌村の屋根が点在する姿を一望できます。
かえる神社と森の滑り台
森の奥へ進むと、少し変わった神社が現れます。その名も「かえる神社」。
小さな社の周囲には、無数のかえるの置物が奉納されており、「無事かえる」「元気かえる」「福かえる」などの願いが込められているそうです。旅の無事を祈り、私も再び手を合わせました。
近くには「森の滑り台」という、全長の長いユニークな滑り台もあります。
子ども連れの家族が楽しそうに遊んでいましたが、私は眺めるだけに。緑の中に響く笑い声が、夏の午後にぴったりの明るさを添えていました。
冷やし抹茶と合掌ぜんざいで締めくくり
歩き疲れたところで、地下道近くにある「萬古庵」に立ち寄りました。
6月とはいえ、この日は真夏のような暑さ。冷えた抹茶の香ばしい苦みと、ぜんざいの優しい甘さが、身体に染み渡るようでした。木の縁台に腰を下ろし、風に揺れる木々を眺めながら味わう時間は、旅のご褒美そのもの。
ふと耳を澄ますと、遠くからは水車の音、そして蝉の声。どこか懐かしく、穏やかな時間が流れていました。
次回は、合掌村の「合掌の里」エリアでまだ訪れていないエリアの様子をお届けします。
地図・アクセス
〒509-2202 岐阜県下呂市森2369