中山道・醒井宿を歩く(後編) – 湧水の宿場町で、歴史と涼を感じる旅 – ( 滋賀県米原市の旅 : 2025-07-13 )

 

中山道・醒井宿(滋賀県米原市)

木彫美術館と延命地蔵尊 ―― 町の文化と歴史に触れる

米原市醒井宿資料館・問屋場を後にし、宿場町を北東へ進むと、約80メートル先の右手にひときわ目を引く建物が現れました。醒井木彫美術館です。

中山道・醒井宿を歩く(前編) – 湧水の宿場町で、夏の涼を感じる旅 – ( 滋賀県米原市の旅 : 2025-07-13 )

こちらは地元出身の彫刻家、森大造氏の作品を中心に、上丹生地域の伝統的な木彫作品を展示する個人美術館とのこと。外観からも、木彫の温かみや美しさが伝わってきます。今回は時間の都合で見学できませんでしたが、次回訪れた際にはぜひ立ち寄りたい、気になる建物でした。

美術館を抜けた先には、「醒井延命地蔵尊」が姿を現します。

本堂の中に安置される鎌倉時代作の地蔵菩薩坐像は、かつて川の中に置かれていたことから「尻冷し地蔵」と呼ばれていたそうです。地蔵菩薩坐像は、高さ270cm、像高234cmの花崗岩を丸彫りにした半跏像で、これほどの大きさの丸彫り地蔵尊は非常に希少といわれています。本堂は閉じられており内部の観覧はできませんでしたが、外観からも重厚感と歴史の深さを感じられました。

お堂の横に静かに佇む赤いお賓頭盧(びんずる)さんの姿も印象的でした。

優しい表情でこちらを見守るように置かれており、旅の疲れを癒してくれる存在です。なお、お堂の真上には名神高速道路が通っており、遠くから車の走行音が聞こえてくるのが少し不思議な感覚でした。自然と歴史の空間の中に、現代の音が混ざる独特の風景です。

日本武尊と居醒の清水 ―― 伝説と名水の涼

延命地蔵尊を後にし、さらに宿場町を東へ進むと、庭園の中にたたずむ「日本武尊の像」が目に入ります。

醒井には「居醒(いさめ)の清水」と呼ばれる湧き水があり、伝説では日本武尊が伊吹山征伐の際、大蛇との戦いで高熱を出したとき、この泉で体を冷やして命をつないだと伝えられています。

清水の近くには、休息のための「腰掛石」や、馬の鞍を掛けたという「鞍掛石」も残されており、歴史の足跡を身近に感じられるスポットです。宿場町の中心を流れる地蔵川沿いからは少し離れますが、清水周辺の空気はひんやりとしており、夏の散策にぴったりの涼しさを体感できます。

さらに進むと、ついに居醒の清水に到着。

岐阜・滋賀の県境にそびえる伊吹山を源とする伏流水が、醒井の地で湧き出す清水です。透明度は非常に高く、年間を通じて水温は一定。古くから「不老長寿の水」「目の病に効く水」として親しまれ、環境省の「平成の名水百選」にも選ばれています。水面を覗き込むと、透き通った水の中に小石や水草がはっきりと見え、手を浸すだけでも涼しさを感じました。

加茂神社と和cafe たち季 ―― 町を見渡す高台と食の楽しみ

居醒の清水を後にし、宿場町の最北端に到達すると、加茂神社に立ち寄りました。

元々は向山の東麓にあった神社ですが、名神高速道路建設の際に現在地へ遷座したとのこと。居醒の清水とは直接の関係はありませんが、宿場町唯一の高台にある神社からの眺望は素晴らしく、この日歩いてきた町並みや遠くの山々を一望できます。旅の締めくくりにふさわしい光景でした。

神社を後にし、駅に戻ろうと思ったところ、川沿いに落ち着いた古民家カフェを発見。「和cafe たち季」です。

和モダンな空間で、地蔵川の清流を眺めながら過ごせる素敵な場所。夏限定のかき氷が名物とのことですが、私は数量限定ランチ「季ごはん」をいただきました。

この日のランチメニューは、地元食材を活かした内容で、

  • 虹鱒のミニ漬け丼

  • だし巻き卵

  • 冷奴

  • キノコ入りのお味噌汁

  • 漬物

  • プチデザート

見た目も美しく、食感や味の変化も楽しめる構成で、ひと口ごとに「日本人として生まれてきてよかった」と感じる瞬間でした。宿場町の散策で少し汗ばむ体を、涼やかな川の風と共に整えることができ、旅のしめくくりにぴったりのランチ体験でした。

旅を終えて ―― 歴史と湧水、そして人の営みを感じる町

今回、初めて訪れた米原市の醒井宿。駅からのアクセスも良く、清流や湧水、歴史的建造物、神社やカフェまで、見どころが徒歩圏内にまとまっているのが魅力です。江戸時代から続く宿場町の町並みや文化、湧水の涼やかさに触れることで、時間がゆっくり流れる感覚を味わえました。

美術館や延命地蔵尊、居醒の清水、加茂神社など、それぞれに歴史や伝説、文化が息づいており、散策しながら学び、感じ、味わう旅となりました。駅近くにある和cafe たち季でのランチも、旅の記憶に彩りを添えてくれます。

年配の方でも気軽に訪れられる落ち着いた町であり、自然と歴史、食を一度に楽しめる醒井宿は、想像以上に魅力的な宿場町でした。次回訪れる際には、美術館の見学や、さらに周辺の湧水スポットも巡ってみたいと思います。

米原市醒井宿は、歴史と自然、そして現代の営みがやさしく共存する町。小さな散策でありながら、心も体も満たされる、充実のひとときを過ごすことができました。また訪れます。

地図

〒521-0035 滋賀県米原市醒井666−2

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