中田島砂丘(日本三大砂丘の1つ) ― 二十年以上ぶりの再訪 ― ( 静岡県浜松市の旅 : 2025-09-28 )

 

中田島砂丘(静岡県浜松市)

浜松まつり会館を後にし、いよいよ旅の締めくくりとなる中田島砂丘へ向かいます。
文化と歴史に触れた直後だからでしょうか。これから広がる風と砂の世界を、いつも以上に深く感じられそうな気がして、自然と歩調がゆっくりになります。

中田島砂丘(なかたじまさきゅう)は、静岡県浜松市南部、遠州灘に面して広がる砂丘地帯。
東西約0.6km、南北約0.6kmほどの規模を持ち、鳥取砂丘、鹿児島県の吹上浜砂丘と並び、日本三大砂丘のひとつに数えられています。

この砂丘は、天竜川から流れ出た土砂が、遠州灘の強い波や季節風によって運ばれ、長い年月をかけて形成されてきたもの。
今この瞬間も、風と波の影響を受け続けており、完成形というものが存在しない、生きた地形です。

二十年以上ぶりの再訪

私が中田島砂丘を訪れるのは、実に二十年以上ぶり。
当時の記憶は断片的ではありますが、広がる砂と海の迫力に圧倒されたことだけは、今もはっきり覚えています。

年月を経て、再びこの場所に立つ。
同じ景色のはずなのに、感じ方はまったく違います。
経験を重ねた分だけ、風の音や砂の表情、遠州灘の荒々しさが、より立体的に迫ってくるようでした。

風車公園側から、砂の丘へ

砂丘へは、風車公園側から進みます。
舗装路を離れ、足元が砂に変わった瞬間、感覚が一気に切り替わります。

想像以上に柔らかい砂。
一歩踏み出すごとに足を取られ、体力を使いますが、その分、自然と歩みがゆっくりになります。


足元には、風が描いた繊細な砂紋(さもん)。
そして、自分の足跡が、次の風で少しずつ消えていく様子。

歩きにくさと引き換えに、ここでしか味わえない時間が流れています。
慎重に歩けば、靴の中に砂が入り込むことも、なんとか最小限で済みました。

視界を埋め尽くす、砂と海

砂丘でできた丘を登りきると、視界が一気に開けます。
目の前に広がるのは、どこまでも続く砂のうねりと、その先に横たわる遠州灘の水平線。

海に近づくにつれ、潮の香りが濃くなり、波音がはっきりと耳に届いてきます。
遠州灘の波は、穏やかという言葉とは少し違う表情。
寄せては返すそのリズムには力強さがあり、この海が砂丘を形づくってきた存在であることを実感させられます。

曇り空から垣間見える空の青、海の青。
その間に広がる、淡くやさしい色合いの砂丘。
三つの色が重なり合い、見事なコントラストを生み出しています。

思わずカメラを構えたくなりますが、まずはレンズ越しではなく、深呼吸。
風を胸いっぱいに吸い込み、その場に立つ感覚を、しっかり身体に刻み込みます。

祭りの舞台としての砂丘

この静かな砂丘が、毎年5月には一変します。
浜松まつりの季節になると、ここ中田島砂丘は勇壮な凧揚げの舞台となり、空と砂丘が一気に熱気に包まれます。

無数の凧が空を埋め尽くし、糸が絡み合い、若衆の掛け声と太鼓の音が響き渡る。
先ほど浜松まつり会館で見た映像が、目の前の風景と重なり、想像が一層鮮明になります。

今は静かに波音が響くだけの場所。
その落差があるからこそ、この土地が持つ奥行きと、浜松まつりが地域に根付いた行事であることを、より強く感じられるのかもしれません。

命をつなぐ場所としての中田島砂丘

中田島砂丘は、景観だけでなく、貴重な自然環境としても知られています。
ここは、アカウミガメの産卵地のひとつ。

例年5月から8月頃にかけて、ウミガメが上陸・産卵する可能性があり、その時期には夜間の立ち入り制限や照明対策など、さまざまな自然保護の取り組みが行われています。

人の営みと、自然の営み。
どちらか一方ではなく、両方を大切にしながら守られてきた場所であることを、現地に立って初めて実感しました。

市街地のすぐそばにある、圧倒的な自然

浜松市は、静岡県内でも有数の規模を誇る都市です。
その市街地のすぐ近くに、これほど雄大な砂丘と海が広がっていることに、改めて驚かされます。

公園を歩き、文化に触れ、そしてこの自然へ。
一日の中で、これだけ多彩な表情を味わえる場所は、そう多くありません。

中田島砂丘は、浜松という街の魅力を、最も象徴的に体感できる場所のひとつだと感じました。

旅の余韻を残して、帰路へ

砂丘でしばらく過ごしたあと、浜松まつり会館の西あたりから遠鉄バスに乗り、浜松駅近くへ戻ります。
歩き続けていたこともあり、心地よい疲労感。

そろそろ休憩も兼ねて、昼食の時間です。
浜松に来たからには、やはり外せないのが「うなぎ」。

その味わいについては、次のブログでゆっくり書くことにします。
どうぞ、お楽しみに。

地図・アクセス

〒430-0845 静岡県浜松市中央区中田島町1313

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