京口門跡から旧街道を辿る亀山宿歩き(三重県亀山市の旅:2025-04-12)
亀山宿 / 京口門跡・旧佐野家住宅(三重県亀山市)
三重県・亀山市にある旧東海道の宿場町「亀山宿」。
私はこれまでに何度か訪れており、城下町らしい坂道と曲がりくねった通りの風情、そして歴史の面影が今も残る町並みに、たびたび魅了されてきました。
これまで足を運んだことのなかった亀山宿の西側、京口門跡からさらに西へと歩く散策ルートに挑みました。
石垣に門と番所があった場所 ― 京口門跡へ
旅のスタートは、JR亀山駅。
そこから西北へ歩くことおよそ18分。
目的地である京口門跡に到着しました。
江戸時代、この地には石垣の上に冠木門や棟門、白塗りの番所を備えた堂々たる門が築かれており、通行人を監視する要所でした。
歌川広重が『東海道五十三次』の一枚「亀山(雪晴)」でその姿を描いていることでも知られています。
今では門そのものは残っていないものの、高台に設けられた案内板や石碑がその歴史を今に伝えています。
目の前には自然が広がり、京口橋から見下ろす風景はなんとも穏やか。
明治末から大正期にかけての京口橋建設により、かつての坂道の面影は失われたそうですが、それでもこの場所に立つと、どこか「門のあった坂下」から眺めた当時の旅人の気分になれるような、不思議な感覚に包まれます。
かつてこの門は「亀山に過ぎたるものの二つあり 伊勢屋蘇鉄に京口御門」と詠まれるほど壮観であり、地元の人々にとっても誇り高き存在だったことが伺えます。
商家の暮らしを今に伝える ― 旧佐野家住宅
京口門跡を後にし、京口橋を西へ渡っていくと、旧東海道沿いに佇む「旧佐野家住宅」が見えてきました。
ここはかつて地主であり、質店や商家を営んでいた佐野家の屋敷。
明治初期に改築されたという入母屋造の立派な町家建築で、今もその姿をよく残しています。
風雨にさらされた黒い瓦屋根、歴史を物語る木格子、そして敷地の奥には古い土蔵。
まるで時間が止まったかのような情景です。
内部は一般公開されており、見学とともに休憩スペースとしても利用できるとのこと。
風通しのよい一室に腰掛けて、冷たい水をいただきながらしばしの休息。
現代の旅人にとって、こうして歴史に触れながらゆったり過ごせる場所があるのは、本当にありがたいものです。
旧街道を西へ ― 思わぬ出会いと驚きの連続
再び歩き始め、西町からさらに旧東海道を進みます。
途中、「アンティーク森」という古民家カフェを目指しましたが、残念ながら営業されていない様子…。
旅先ではこうした“ハプニング”もまた旅の一部。気を取り直して、そのまま西へ。
「コ・ビアン / さくらいろ」という人気レストランの前を通り過ぎ、さらに足を進めると、まちかど博物館『竹細工の館』を発見。
小ぢんまりとした施設ながら、繊細な職人技が詰まった竹工芸品が展示されており、地元の暮らしや文化の一端に触れられる貴重な場所でした。
そして最後にたどり着いたのが、「内田家 明治天皇御召替所跡」。
かつて明治天皇が巡幸された際に休息された場所とされている史跡です。しかし、そこにはなんと焼肉屋が営業中。
まさかの展開に思わず笑ってしまいましたが、こうして歴史と現代が入り混じる様子もまた、今の亀山宿らしい魅力だと感じました。
かつては壮観だった京口門跡の跡地に立ち、明治期の商家でひと休みし、古道を歩きながら文化や人の営みに触れる──。それは、過去と今が交錯する、まさに「時間を歩く旅」のようでした。
所在地
〒519-0165 三重県亀山市野村3丁目2−2