人生初の長野市・善光寺へ(第3回/本堂と境内、門前の昼食) 一生に一度は善光寺参り(長野県長野市の旅 : 2025-10-18)

 

 

善光寺 / 竹風堂(長野県長野市)

圧倒的な存在感――善光寺本堂に向き合う

山門をくぐり、その先に姿を現した善光寺本堂。


東日本最大級の木造仏堂として知られ、国宝にも指定されているその姿を、正面から見上げた瞬間、思わず足が止まりました。

横へ大きく広がる堂々たる構え。
重なり合う屋根のラインは、どっしりと安定感がありながらも、どこか柔らかさを感じさせます。写真や映像で見ていたはずなのに、実物の存在感はまったく別物でした。

外陣から内陣へと足を進めるにつれ、空気が変わっていきます。
ひんやりと澄み、音が吸い込まれていくような感覚。日常の時間軸から、静かに切り離されていくのがわかりました。

待ち時間さえ、参拝の一部

この日は本堂参拝までに、30分以上並ぶことになりました。
それなりの待ち時間ではありましたが、不思議と長くは感じません。(本堂内は撮影禁止)

列に並ぶ人々の表情は静かで、どこか落ち着いています。堂内から微かに聞こえてくる読経の声が、心を少しずつ内側へと向かわせてくれました。
ここでは、待つ時間さえも参拝の一部なのだと、自然に受け止めることができたのです。

お戒壇巡り――暗闇の中で向き合う自分

善光寺参りの最大の特徴が、「お戒壇巡り」。
本堂の床下へと続く入口から足を踏み入れると、そこは完全な暗闇でした。光は一切なく、視界はゼロ。想像以上の暗さに、思わず息をのみます。

頼れるのは、壁づたいに設けられた「極楽の錠前」へと続く手触りだけ。
常に右手を壁に添えながら進むため、自然と力が入り、次第に腕が痛くなってきました。なかなか前に進めず、不安が胸をよぎります。

それでも、手を離すことはできません。
暗闇の中では、その感覚だけが自分の存在を確かめる手段でした。

やがて、錠前に触れた瞬間。
言葉にならない安堵感が、じわりと広がります。暗闇を抜け、再び光の中へ戻ったとき、ほんのわずかな時間だったはずなのに、深い体験を終えたような感覚が残っていました。

善光寺本堂は、拝むだけの場所ではありません。
身体ごと信仰に向き合う空間なのだと、はっきりと実感しました。
この「お戒壇巡り」が、今回の旅で最もハラハラした出来事だったことは間違いありません。

日本忠霊殿と善光寺史料館――歴史の奥行きに触れる

本堂の北側、高台に位置する日本忠霊殿へ。


白い外壁が印象的な近代建築で、左右対称の端正な外観が、周囲の木々と静かに調和しています。境内の賑わいから少し離れた場所にあり、凛とした緊張感が漂っていました。

併設されている善光寺史料館では、善光寺の創建から現在に至るまでの歩みを、絵巻や古文書、仏像を通してたどることができます。
戦乱や火災を乗り越え、何度も再建されてきた善光寺。その歴史を示す資料のひとつひとつに、境内を歩くだけでは見えてこない重みがありました。

参拝の合間に立ち寄ることで、善光寺という存在が、より立体的に心に刻まれていきます。

経蔵――くるりと回す、祈りのかたち

続いて向かったのは、本堂の西側に建つ経蔵


重要文化財に指定されている建物で、内部には八角形の輪蔵が収められています。

この輪蔵は、回転させることで、中に納められた経典をすべて読んだのと同じ功徳が得られるとされるもの。実際に体験できるのが、この経蔵の大きな魅力です。(写真撮影禁止)

木の重みを感じながら、ゆっくりと輪蔵を回すと、堂内にわずかな軋み音が響きます。
派手さはありませんが、身体を使って祈るという行為が、静かに心へ残りました。善光寺らしい信仰のかたちに、そっと触れた気がします。

大勧進――善光寺を支える精神的中枢

次に訪れたのは、大勧進
善光寺を支える二つの寺務機関のひとつで、天台宗の別格本山として位置づけられています。

山門からほど近い場所にありながら、境内は驚くほど落ち着いた雰囲気。御殿建築風の本堂と、丁寧に整えられた庭園が、格式の高さを感じさせます。

大勧進は、歴代の貫主が善光寺全体の運営や法要を担ってきた場所。写経体験や特別拝観が行われることもあり、信仰を身近に感じられる場として親しまれています。

本堂参拝のあとに訪れると、善光寺の精神的な支柱が、ここにあることを自然と理解できました。

名残を惜しみつつ、門前へ

本当は、このまま城山公園や美術館、動物園にも足を延ばしたかったところですが、本堂参拝だけで45分ほど費やしており、そろそろ帰りの時間が気になり始めました。

名残を惜しみつつ境内を後にし、足早に表参道へ戻ります。
最後に、気になっていた店で、遅めの昼食をいただくことにしました。

竹風堂 善光寺大門店――旅を締めくくる一膳

向かったのは、竹風堂 善光寺大門店


二階で食事ができると知り、特急「しなの」出発40分前、まさに“すべりこみ”で席につくことができました。

時間は限られているはずなのに、窓越しに感じる門前町の落ち着いた空気に、気持ちは不思議とゆったりしていきます。

選んだのは山家定食
運ばれてきた膳を見た瞬間、思わず頬が緩みました。

艶やかな栗おこわは、口に含むと栗の甘みがふわりと広がり、もち米の食感も心地よい一品。好物のニジマスの甘露煮は、骨までやわらかく、甘辛い味付けが旅の疲れにじんわりと染み渡ります。

山菜の煮物、むかごのくるみ味噌和えと続き、一品ごとに信州の山の恵みが丁寧に表現されているのが伝わってきました。
締めくくりのりんごジュースは驚くほど爽やかで、口の中をすっと整えてくれます。

限られた時間の中で出会ったこの一食が、善光寺参りの記憶を、より豊かなものにしてくれました。
心からそう思える、大満足の昼食でした。

今回の旅は、地域の歴史や文化、人々の想いに触れる時間でもありました。

住所 / 地図

〒380-0851 長野県長野市長野元善町 イ

 

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