大徳寺・瑞峯院巡り。荒波と十字の庭園と千利休最期の地を訪ねて (京都府京都市の旅 : 2025-12-13)
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大徳寺 / 瑞峯院 / 山門・仏殿(京都府京都市)
大徳寺の静寂に身を委ねる旅の続きです。興臨院で室町建築の直線美と穏やかな庭園を堪能した後は、さらにその奥、そして大徳寺の核心部へと歩みを進めました。
今回巡るのは、荒々しい波紋が心を揺さぶる「瑞峯院」、歴史の舞台となった「金毛閣」、そして生命の力強さを物語る「仏殿」と「イブキ」です。
瑞峯院:重森三玲が描く、静と動の極致
興臨院を後にし、次に向かったのは瑞峯院(ずいほういん)です。
ここは九州のキリシタン大名として名高い大友宗麟が、自身の菩提寺として建立した塔頭。門をくぐり、方丈へと進むと、そこには昭和を代表する作庭家・重森三玲による、あまりにも鮮烈な二つの庭園が待っていました。
荒波に立ち向かう「独坐庭(どくざてい)」
方丈の正面に広がる「独坐庭」を目にした瞬間、思わず息を呑みました。
先ほどまで眺めていた興臨院の穏やかな砂紋とは、対極にある表現。そこに描かれているのは、激しく打ち寄せる「荒波」です。
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ダイナミックな砂紋: 深く、鋭く引かれた砂紋は、まるで荒れ狂う海そのもの。
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力強い巨石: 中央にそそり立つ石組みは、怒涛に洗われながらも決して揺るがない、強い意志を持った孤島のように見えます。
「独坐大雄峰」という禅の言葉から名付けられたこの庭。周囲の喧騒を断ち切り、ただ一人、自然と、そして己と対峙する……そんな厳格なまでの力強さが、石と砂だけで完璧に表現されています。庭園がこれほどまでに感情を揺さぶるものだとは、想像以上の衝撃でした。
祈りを秘めた「閑眠庭(かんみんてい)」
建物の裏手に回ると、打って変わって静謐な「閑眠庭」が現れます。
一見すると、白砂の中に石が点在する現代的なデザインの庭園ですが、ここには大友宗麟の信仰にまつわる、驚くべき仕掛けが隠されていました。
隠された十字架 縦に並ぶ三つの石と、横に並ぶ三つの石。これらが交差する形を成し、庭園の中に「十字架」が描き出されています。 禅寺という空間の中に、自らの信仰をひっそりと、しかし確固たる存在感で組み込む。この重森三玲のセンスと、それを許容した大徳寺の懐の深さには脱帽するしかありません。
縁側に座り、この背景を知った上で眺めると、石の一つひとつが祈りの言葉のように見えてきます。荒波の「動」に対し、こちらは深く穏やかな「静」。心に染み入るような癒やしのひとときでした。
泉仙 大慈院店:紅葉の路地を抜けて
瑞峯院を後にし、さらに奥へと進むと「泉仙 大慈院店」が見えてきます。
お店へと続く道すがらも、隅々まで美しく整備されており、時折顔を出す紅葉が、落ち着いた境内の色彩に鮮やかなアクセントを添えていました。
歴史を感じさせる重厚な建物の中では、伝統的な精進料理が提供されており、多くのお客さんで賑わっています。 あいにくこの日は歯の調子が優れず、外食を控えていたため見学のみとなりましたが、建物の佇まいと漂う出汁の香りに、「次は必ずここで食事をしよう」と心に決めました。
山門(金毛閣):千利休、切腹の引き金となった場所
再び大徳寺の中心エリアに戻り、威風堂々とそびえ立つ山門(金毛閣)の前に立ちます。
鮮やかな朱色が目を引くこの巨大な二重門は、大徳寺を象徴する建造物であると同時に、日本史上最も有名な「因縁のスポット」の一つでもあります。
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利休の木像: 利休がこの門の上層を改修した際、寺側が感謝の印として、雪駄を履いた利休の木像を安置しました。
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秀吉の逆鱗: これを知った豊臣秀吉が「門を通る際、利休の足の下をくぐらねばならぬとは何事か!」と激怒。これが決定打となり、利休は自害へと追い込まれることになります。
見上げるほどに立派な門ですが、その背景にある歴史の非情さを思うと、一筋縄ではいかない重みが伝わってきます。内部は非公開ですが、この門を見上げるだけで、秀吉と利休の間に流れた緊迫した空気が、時空を超えて肌に伝わってくるかのようでした。
仏殿とイブキ:生命のうねりと禅の空間
山門のすぐ隣に位置するのが、大徳寺の本尊を祀る仏殿です。
1665年に再建されたこの建物は、禅宗様建築の傑作。一歩足を踏み入れると、天井の高さと床に敷き詰められた平瓦の整然とした様子に、自然と謙虚な気持ちにさせられます。
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天井の「盤龍図」: 天井を見上げれば、狩野探幽による力強い龍。釈迦如来を守護するように、今にも舞い降りてきそうな躍動感で描かれています。
そして仏殿のすぐ傍らには、もう一つの主役が鎮座しています。京都市の天然記念物にも指定されている**「大徳寺のイブキ(ビャクシン)」**です。
生命の彫刻 天に向かってうねるように伸びるその姿は、まさに圧巻。 幹がまるで、苦悩する巨人の筋肉のようにねじれ、複雑な曲線を完璧に描いています。 建築物の幾何学的な直線美と、この生命力溢れる有機的なフォルム。このコントラストこそが、大徳寺の風景に比類なき奥行きを与えているのだと感じました。
大徳寺の境内はあまりにも広く、歴史も、美学も、生命の力も、一歩進むごとに新しい表情を見せてくれます。
今回の旅で巡った「瑞峯院」「金毛閣」「仏殿」は、それぞれが異なる強烈なエネルギーを放っていました。しかし、大徳寺の旅はこれだけでは終わりません。
次回は、今回巡った場所の中でも、個人的に最も感動し、心を奪われた庭園を有する「黄梅院(おうばいいん)」の様子をご紹介します。
住所 / 地図
〒603-8231 京都府京都市北区紫野大徳寺町53





























