安土文芸の郷公園を歩く――信長の館と、ひと息つける午後の時間 ( 滋賀県近江八幡市の旅 : 2025-09-27 )

 

安土文芸の郷公園・信長の館(滋賀県近江八幡市)

近江風土記の丘をひととおり見学し、ゆっくりと歩いて向かったのが、すぐ隣に広がる「安土文芸の郷公園(あづちぶんげいのさとこうえん)」です。
歴史をじっくり味わったあとの足取りは、さすがに少し重たくなっていましたが、それでもこの公園に足を踏み入れた瞬間、空気がふっとやわらいだように感じました。

安土文芸の郷公園は、史跡中心の近江風土記の丘とは雰囲気が異なり、文化施設やレストラン、広場、遊具などが整備された、開放感のある公園です。
観光客だけでなく、地元の家族連れや散歩を楽しむ人の姿も多く、安土の日常に触れられる場所でもあります。

公園内には、
・安土城天主 信長の館
・文芸セミナリヨ(音楽ホール)
・あづちマリエート
・文芸の郷レストラン
などが点在し、さらに子ども向けの遊具広場も充実しています。
歴史と文化、そして憩いの場が自然に混ざり合っている印象です。

まずは腹ごしらえ。文芸の郷レストランへ

半日以上歩き続けていたこともあり、まず向かったのは文芸の郷レストランでした。
公園内のレストランとしては比較的広めの店内で、窓からは緑が見え、ほっと一息つける空間です。

メニューを見ると、軽食だけでなく、しっかりとした定食類も揃っていて、歩き疲れた身にはとてもありがたい存在でした。
信長うどんや戦国焼定食、近江牛牛丼など、戦国や安土にちなんだ料理が並び、どれも魅力的です。

悩んだ末に選んだのは、「安土御膳(1500円)」。


私の好物である赤こんにゃくが含まれているのが、決め手になりました。

よしうどん、赤こんにゃく、えび豆、かちどき汁など、安土の郷土食が少しずつ詰まった御膳は、見た目にも楽しく、どれも素朴でやさしい味わいです。
歩いて消耗した体に、じんわりとエネルギーが染み渡っていくのが分かります。
ここまで来て、ようやく「休憩している」という実感を持てました。

いよいよ、信長の館へ

しっかりとエネルギー補給を終え、次はいよいよこの公園の主役ともいえる「安土城天主 信長の館」へ向かいます。

安土城天主 信長の館は、織田信長が1579年に築いた幻の名城・安土城の高層天主(五階・六階部分)を、原寸大で復元・展示したミュージアムです。
この天主は、1992年に開催されたスペイン・セビリア万博の日本館展示として復元されたもので、その後、この地に移設・保存されています。

館内に入った瞬間、思わず言葉を失いました。


目の前に現れるのは、巨大で、あでやかで、圧倒的な存在感を放つ天主。
「城の模型」ではなく、「建築物」として目の前に立ちはだかるその姿に、ただただ圧倒されます。

内部には、狩野永徳を中心に描かせたと伝えられる金碧障壁画の再現が施され、金色を基調とした空間が広がっています。


現在では「平世の安土城」として保存・展示されているこの天主は、権力の象徴であると同時に、文化の結晶でもあったのだと実感させられます。

実際に安土城跡を登ったあとだからこそ、「この天主が、あの山の上にそびえていた」という事実が、より現実味をもって迫ってきました。

VRシアターで、もう一度安土へ

館内には、VR(バーチャルリアリティ)安土城シアターもあり、約15分間のショートムービー「絢爛・安土城」を鑑賞できます。


200インチの大画面で再現される安土城と城下町は、迫力があります。

ただ、少し正直に言えば、先ほど滋賀県立安土城考古博物館で高精細CG映像を観ていたこともあり、内容的にはやや重なる部分も感じました。
それでも、「実物大の天主を目の前にした直後に映像を見る」という体験は、ここならではのものです。

旅の締めくくりは安土城郭資料館へ

信長の館を後にし、駅前にもどり、レンタサイクルを返却しました。
その後、安土駅南側すぐにある安土城郭資料館へ立ち寄ります。

資料館では、安土城を1/20サイズで精巧に再現した模型や、屏風絵風の陶板壁画などが展示されており、これまで見てきた史跡や復元展示を、もう一度整理するような時間を過ごせました。
お土産コーナーもあり、旅の記念を探すのにもぴったりです。

人生で初めて訪れた安土。
丸一日、歩いて、見て、考えて、少し疲れましたが、それ以上に充実感のある一日でした。

信長が思い描いた城と町、そしてそれを今に伝えようとする人々の営み。
安土は、歴史の教科書の中だけではなく、確かに「歩ける場所」として、そこにありました。

地図

〒521-1321 滋賀県近江八幡市安土町桑実寺777

 

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