敦賀市立博物館――往時の記憶を今に伝える、石造りの文化遺産 ( 福井県敦賀市の旅 : 2025-07-03 )

 

敦賀市立博物館(福井県敦賀市)

敦賀市の旅もいよいよ東のエリアへ。博物館通りを歩きながら、今回の目的地「敦賀市立博物館」へ向かいました。

この建物は、昭和2年(1927)に建てられた旧大和田銀行本店を改装したもので、重厚な石造りの外観が印象的。すぐ隣には「みなとつるが山車会館」もありますが、今回はこの歴史的建築そのものが主役の「敦賀市立博物館」をじっくり巡りました。

石造りの外観と、歴史を感じる正面玄関

博物館通りの並木の先に見えてきたのは、白亜の洋館のような外観。

花崗岩のような石を用いた壁面と、アーチ状の窓、そして角を落としたクラシックなデザインが特徴です。
当時、北陸でも有数の商都として栄えた敦賀にふさわしい威厳を感じさせ、まるで映画の舞台のよう。国の登録有形文化財にも指定されており、建物自体が貴重な文化遺産です。

特に印象的だったのは正面玄関。


分厚い両開きのドアを押して中へ。

天井の装飾や照明器具なども創建当時の雰囲気を残しており、銀行としての威厳と格式を今に伝えていました。

1階――金庫室と敦賀空襲の記憶

1階は、当時の銀行業務室をそのまま利用した展示フロア。


カウンターや支店長室の仕切りが残され、まるで昭和初期にタイムスリップしたような感覚です。敦賀の商業や港の発展、そして金融の歴史を物語る資料が並び、当時の活気が伝わってきました。

奥にある金庫室は特に印象深い空間です。


分厚い鉄扉が今もそのまま残されており、扉の重厚感と中の静けさが独特の雰囲気を生み出していました。


さらに、敦賀空襲を描いた絵画もあり、戦時下の街の姿がリアルに伝わってきました。港町として栄えた敦賀が、戦争の悲劇をも経験したことを改めて感じます。

2階――貴賓室に残る、華やかな面影

2階に上がると、雰囲気は一転。ここには当時の貴賓室や応接間が再現されています。


明るいクリーム色の壁と寄木張りの床、そして輝く天井装飾。洋館らしい優美さが漂い、まるで外国の邸宅に招かれたような錯覚を覚えました。

この階では、敦賀ゆかりの文化人の作品や資料も展示されており、港町が育んだ芸術や文化の香りを感じることができました。
銀行としての格式と文化の融合――それがこの2階の魅力です。

3階――市民に開かれた講堂

最上階の3階には、広々とした講堂があります。


高い天井にアーチ状の窓が並び、やわらかな自然光が差し込む空間。かつては地域の集会や音楽会、講演会などに利用されていたそうです。

講堂の舞台や座席の配置を眺めていると、当時の人々が談笑しながら文化を楽しむ様子が目に浮かびました。静かな中に、人の気配が感じられる不思議な空間です。

壁際には古い照明器具も展示されており、「ここでどんな音楽が響いていたのだろう」と想像が広がります。

地下――食堂に残る日常のぬくもり

最後に向かったのは地下階。


ここは当時、銀行の職員が利用していた食堂だった場所で、現在はその雰囲気を再現した展示がされています。白いタイルの壁や木製のテーブルなど、どこか懐かしさを感じる空間。

展示パネルには、当時の職員たちの集合写真やメニュー表なども紹介されており、「華やかな銀行の裏側にあった日常」を垣間見ることができます。
豪華な貴賓室とは対照的に、この地下には働く人々の生活のぬくもりが残っていました。

敦賀市立博物館を巡って感じたのは、「建物そのものが展示物」ということ。
1階では産業の力強さを、2階では文化の華やかさを、3階では人の交流を、そして地下では働く人々の温もりを――それぞれが敦賀という街の多層的な歴史を映し出していました。そして、当時の銀行員たちの息遣い、商人たちの情熱、市民たちの笑顔――それらすべてが、この石造りの建物にしっかりと刻まれていました。

今回の旅は、敦賀の歴史と文化をじっくり感じる時間となりました。
次回は、博物館に隣接する「みなとつるが山車会館」で、敦賀まつりを彩る豪華絢爛な山車を訪ねます。

地図

〒914-0062 福井県敦賀市相生町7−8

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