春を呼ぶ熱気——近江八幡左義長まつりを訪ねて ( 滋賀県近江八幡市の旅 : 2025-03-15 )
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左義長まつり(滋賀県近江八幡市)
2025年3月15日(土)、滋賀県近江八幡市を訪れ、「近江八幡左義長まつり」を見学してきました。
午前中、ラ コリーナ近江八幡で名物の焼きたてバームクーヘンをいただき、その柔らかく甘い味わいに舌鼓を打った後、市街地へ移動。
約20年ぶりの近江八幡へ 〜ラ コリーナ近江八幡で出来たてバームクーヘンを堪能〜 ( 滋賀県近江八幡市の旅 : 2025-03-15 )
天気はあいにくの空模様で、午後には雨脚も強まり風も出てきましたが、それを吹き飛ばすような熱気が街中にあふれていました。
左義長まつりは毎年3月中旬に2日間にわたって開催され、旧城下町の奉納町によって日牟禮八幡宮へと奉納される、歴史ある春の祭礼行事です。織田信長も町衆とともに踊り出たとされ、「天下の奇祭」とも称されるこの祭りは、国選択無形民俗文化財にも指定されています。
祭りの主役は「左義長」と呼ばれる13基の豪華な山車(だし)。その年の干支にちなんだ装飾が施されており、2025年は「巳(蛇)」がテーマでした。
驚いたのはその素材。小豆や大豆などの穀類、スルメや昆布といった乾物など、すべてが食材で作られているとのこと。
それぞれの奉納町が正月明けから丹精込めて製作し、祭礼初日に行われる「ダシコンクール」での栄冠を目指して創意工夫を凝らします。
今回見学した初日は、左義長が若衆たちによって担がれ、旧城下町を練り歩く「渡御(とぎょ)」が行われました。
威勢のいい掛け声が響き、雨に濡れながらも笑顔で左義長を担ぐ姿は、見る者の胸を熱くします。
中でも印象に残ったのは、雨に濡れながらも色鮮やかに輝く左義長の数々。
蛇の姿を立体的に描いたもの、干支にちなんだ故事をモチーフにしたものなど、どれも見ごたえがあり、艶やかで豪快な造形には感嘆の声が漏れました。素材の色合いを巧みに活かした造りは、単なる装飾を超えた芸術作品のようでした。
本来なら、白雲橋を渡って日牟禮八幡宮に参拝したかったのですが、強まる雨と祭りの賑わいで傘を差しての通行が難しく、今回は断念。その代わり、旧八幡東小学校として地元で親しまれてきた「白雲館」から祭りの様子をまったりと見学させていただきました。残念ながら2階は関係者用に使用されており立ち入れませんでしたが、1階からでも迫力は十分伝わってきました。
お祭りに関わる人々のあたたかな笑顔と誇りに満ちた姿を見ていると、地域の伝統を支える情熱をひしひしと感じました。
この日は初日のため、見学できたのは渡御まで。翌日には、祭りのハイライトとも言える「ケンカ」と呼ばれる左義長同士の押し合いが日牟禮八幡宮で繰り広げられます。そして、祭りの最終幕では、奉火が行われます。
若衆たちが全力で担ぎ抜いた左義長は、日牟禮八幡宮の境内にて火除け・厄除けの願いを込めて燃やされるのです。
数ヶ月かけて作り上げ、晴れ舞台を担ぎ、そして潔く炎に還る——この潔さに、日本人の「祭り」への深い精神性を感じずにはいられません。
雨と風に見舞われた一日でしたが、そんな天候さえも忘れるほどの熱気と感動を味わえた左義長まつり。
奇祭という名にふさわしい、力強くも繊細な文化の魅力を五感で堪能できた素晴らしい一日となりました。
近江八幡の旅はまだまだ続きます。
地図
〒523-0864 滋賀県近江八幡市為心町9−1