鶴舞公園にて、はじめての「鶴々亭 / 百華庵」見学記 ( 名古屋市昭和区の旅:2025-04-27 )

 

鶴々亭 / 百華庵(名古屋市昭和区:鶴舞公園内)

名古屋・鶴舞公園は、もう30回以上は訪れたお気に入りの場所。
桜の季節も、夏の木陰も、図書館に立ち寄った帰りも、何度も何度もこの公園に足を運んできました。けれど、そんな私でも“入れたことがなかったエリア”がひとつだけあります。そう、「鶴々亭(かくかくてい)」です。

公園の東側、中央図書館のすぐそばに佇む、和風の門構えと庭園に囲まれた静かな空間。通りがかるたびに「今日は空いてるかな?」と確認しては、いつも閉まっていて、ため息をつくのが恒例になっていました。

そんな“閉ざされた庭園”が、この日、ついに開いていたんです。

この日は、鶴舞公園のすぐ隣に新しくできた「STATION Ai」を訪れた帰りでした。

未来型の施設をひととおり見学し、公園の中をぶらぶらと散策。特に目的もなく歩いていると、目の前に見慣れたあの門が。

……あれ? 開いてる?

目を疑いました。見慣れた「立入禁止」の札がなく、門が開け放たれ、係の人の姿も見える。恐る恐る近づいてみると、どうやらこの日はお茶会のイベントが開催されていたようで、その関連で施設が開放されていたようです。

お茶会の次の回までは1時間以上もあるとのことで参加は断念しましたが、なんと、庭園の見学だけでも可能とのこと。これはもう、逃す手はありません。

 

昭和の名建築、鶴々亭と百華庵をめぐる

まず出迎えてくれたのは、昭和3年に建てられた「鶴々亭」。


昭和天皇の即位を祝して名古屋で開催された「御大典奉祝名古屋博覧会」の際に、茶席の参考館として建てられたものだそうで、名古屋の材木商工同業組合が総力をあげて建築したといいます。主要な造作材には、木曽桧の最高級品が使われているとのこと。

建物の造りは、中京間と呼ばれる地域独特の和風建築様式で、玄関から畳の広間、庭へと続く動線が美しく計算されています。

華美ではないけれど、どこか品格がある。静けさと風格が同居する佇まいに、しばし時間を忘れて立ち尽くしてしまいました。

庭園をぐるりと回ると、今度は「百華庵」へ。

こちらは昭和区にあった個人宅の茶室を、平成10年度末に名古屋市が移築した建物だそうです。2部屋だけのこぢんまりとした構成ですが、黄色い瓦が印象的。これは、大正時代末期に谷口仲太郎氏が製造したものだそうで、八事興正寺や徳川美術館の茶席でも使われた、由緒ある瓦とのこと。

全体としてやや老朽化の気配はあるものの、その分、年月を重ねてきた“味わい”が感じられる空間でした。

 

美しい庭園に包まれて

今回、もっとも感動したのは、実は建物そのものよりも、そこに広がる「庭園」でした。
まるで鶴舞中央図書館と同じくらいの広さをもつ庭が、鶴々亭と百華庵を囲むように広がっていて、一歩足を踏み入れただけで、外の喧騒がすっと遠のいていくのがわかります。

木々の新緑はやわらかく、地面には苔が美しく広がっていて、手入れの行き届いた日本庭園が広がっていました。まさか、こんな静かな空間が、普段歩いているあの賑やかな鶴舞公園のすぐ脇に存在していたなんて──。

普段は閉ざされているがゆえに、庭そのものの保存状態も極めて良好。歩く道もきれいに掃き清められていて、まるで時間が止まったかのような感覚になります。

今まで30回以上鶴舞公園を訪れてきて、ずっと気になっていたのに入れなかった鶴々亭。
今回、STATION Aiの訪問がきっかけで、ようやく偶然にも開園しているタイミングに出会えたこと、本当にラッキーだったと思います。

見学中、園内ではお茶会に参加している方々が静かに行き交っていて、全体が落ち着いた時間で包まれていました。
“見学だけ”でもこれほどの満足感。これは次回、ぜひお茶会に参加してみたい──そう強く思いました。

ただし、鶴々亭エリアは普段は施錠されており、開園はイベント時に限られているようです。名古屋市や鶴舞公園のホームページで事前に開催情報をチェックしておくのがおすすめですね。

今回の出会いは、ほんの偶然の産物だったかもしれません。けれど、いつも歩いている道の先に、こんなに素敵な“未体験ゾーン”があるという発見は、何度も来ている場所でも、まだまだ楽しみがあることを教えてくれました。

また一つ、鶴舞公園の魅力を深く知ることができた一日でした。

◆地図

〒466-0064 愛知県名古屋市昭和区鶴舞1丁目1

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