高座結御子神社と高蔵公園 ― 熱田の地に眠る歴史と賑わい(名古屋市熱田区の旅:2025-05-31)

 

高座結御子神社と高蔵公園(名古屋市熱田区)

バスで熱田へ

南区・泉楽公園近くからバスに乗り込み、一路北へ。車窓の外を流れる景色は、住宅街から商業施設へと移り変わり、やがて熱田区の「高蔵」バス停に到着しました。

熱田区といえば、誰もが思い浮かべるのは熱田神宮や白鳥庭園といった大規模な観光名所です。しかし、その近くにある高座結御子神社高蔵公園には、これまで足を運んだことがありませんでした。大きな観光地に隠れて見過ごしがちですが、今回の散策ではこのエリアの奥深さを味わうことにしました。

祭礼の日の高座結御子神社

バスを降り、付近をふらふら。

この日は祭礼があり、参道沿いの道路は歩行者専用。ずらりと並んだ露店からは甘い香りや香ばしい匂いが漂ってきます。

「高座さん」の愛称で地元に親しまれる高座結御子神社は、伝承によれば天武天皇の時代(7世紀後半)に創建されたと伝わります。熱田神宮の境外摂社として深いつながりを持ち、その由緒は『続日本後紀』にも記録されているほど。承和2年(836年)の条には「高座結御子神」が「熱田大神御児神」として名神に列せられたことが記されており、古くから重要な神社であったことがうかがえます。

境内に進むと、とりわけ親子連れの姿が目立ちました。その理由は、境内にある「御井社」と呼ばれる井戸にあります。子どもが井戸をのぞき込むことで「虫の気」を封じ、夏の病にかからないと信じられてきた井戸で、古くから子育て・成長祈願の信仰を集めてきました。龍神伝説とも結びつき、井戸をのぞいてご神恩をいただこうと訪れる親子の姿は、今も昔も変わらぬ信仰のかたちを示しています。

春の「子預祭」や、秋の例大祭など、子どもの健やかな成長を願う行事が多いのも、この神社の大きな特色です。たまたま祭礼の日に訪れることができたのは本当に幸運で、地域に息づく信仰を肌で感じることができました。

高蔵公園へ ― 遺跡が眠る緑地

参拝を終え、神社の裏手に広がる高蔵公園へと向かいます。

広場に遊具や滑り台が整備され、斜面を利用した大きな滑り台も!この日は雨のため静まり返った公園でしたが、元気いっぱいに子供達が遊ぶ姿を想像すると、自然と笑みがこぼれました。

しかし、この公園の真価は遊具だけではありません。ここは高蔵遺跡の一部であり、弥生時代から古墳時代にかけての重要な遺構が分布していた場所なのです。

遺跡からは環濠集落や貝塚が見つかり、さらに「パレス式土器」と呼ばれる赤い装飾土器が出土しました。これは東海地方に特徴的な土器文化の始まりを示すものであり、高蔵遺跡がその発祥地のひとつとして知られています。

園内には古墳も点在しており、代表的なものが高蔵1号墳です。7世紀前半に築かれた円墳で、豪華な副葬品が出土したことから、この地域を治めた有力者の墓と考えられています。

参道から公園へと続く森林地帯を歩いていたときは、ただの緑豊かな林と思っていましたが、そこがまさに古墳群のエリアだったのです。静かな森の中に眠る古代の営みを思うと、ただの公園散策が一気にタイムスリップしたような感覚に変わりました。

散策を終えて

高座結御子神社では、地域に根ざした信仰と祭礼の熱気に触れ、高蔵公園では古代から続く歴史の重みを感じることができました。どちらも、ただの「近所の神社」「子どもの遊び場」として片づけてしまうには惜しいほど、奥深い背景を持っています。

このあとは金山駅まで歩いて戻ることにしました。大都市・名古屋の中心駅のひとつから徒歩圏内に、これほど豊かな歴史と文化が眠っていることに驚き、同時に誇らしくも思いました。

 

地図

〒456-0015 愛知県名古屋市熱田区高蔵町9−9

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