鈴木敏夫とジブリ展 ― 愛・地球博記念公園 体育館にて、ジブリの源流に触れる一日( 愛知県長久手市の旅 : 2025-09-03 )
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鈴木敏夫とジブリ展 / 愛・地球博記念公園 体育館(愛知県長久手市)
ジブリパークに隣接する愛・地球博記念公園 体育館で開催されていた「鈴木敏夫とジブリ展」に行ってきました。
スタジオジブリを支えてきた名プロデューサー・鈴木敏夫さん。その半生と、彼が育んできた言葉・本・映画・音楽、さらには地元ならではの文化とのつながりを紹介する展覧会です。
今回の展示は2025年7月12日から9月25日まで開催され、全国巡回の最終地として愛知に戻ってきました。つまり、この会場がフィナーレ。しかも名古屋生まれの鈴木敏夫さんにとっても、凱旋にふさわしい舞台といえるでしょう。
私自身も「最後の会場ならばぜひ」と足を運ぶことにしました。
名古屋で育った少年時代の記憶
入場して最初に出迎えてくれるのは、鈴木敏夫さんの幼少期にまつわる展示。
生まれ育ったのは名古屋市東区・大曽根のあたり。私にとっても馴染みの深い地域だったため、個人的にグッと親近感を覚えました。戦後の混乱期に少年時代を過ごし、本や映画に夢中になっていった鈴木さん。その姿を追体験できるのが冒頭のコーナーです。
当時の写真や生活用品、そして読み耽った本の表紙が並びます。漫画雑誌、文学作品、少年向けの冒険小説…。そこから「言葉」を愛し、後に雑誌『アニメージュ』の編集者を経て、ジブリと出会うまでの道筋が自然と見えてきます。
蔵書と映像・音楽コレクションの圧倒的なボリューム
展示の第一章では、鈴木さんが収集してきた膨大な書籍・映画・音楽の資料が一挙に公開されていました。本棚にぎっしりと並ぶ本の群れは、単なる所有ではなく、彼の思考を形成してきた「血肉」そのもの。
文学から思想書、映画パンフレットやシナリオ集に至るまで、「あの作品の裏にはこういう本の影響があったのか」と驚かされる資料ばかりです。中には宮崎駿監督や高畑勲監督との出会いを語る上で欠かせない雑誌記事も展示されており、プロデューサーとしての「言葉の力」がどう培われたのかを実感しました。
音楽コーナー ― 音で振り返る記憶
次のゾーンは「音楽」。レコードジャケットがずらりと並び、ラジオ番組の録音音源や、当時のヒット曲とともに映像が流れていました。ここでは、鈴木さんの感性が「音」によって磨かれてきたことがわかります。
ジブリ作品にとって音楽は欠かせない要素ですが、その感性の源がこうした日常の中にあったのだと思うと、展示を見ている自分自身も「音楽に触れる体験」を重ね合わせるような気持ちになりました。
トトロとの記念撮影スポット
展示の途中には「となりのトトロ」と記念撮影ができるスポットも用意されていました。
大きなトトロのぬいぐるみと並んで写真が撮れる場所は、やはり子どもから大人まで大人気。私もつい並んで一枚撮ってしまいました。こうした体験型の仕掛けがあると、展示が単なる資料鑑賞ではなく「ジブリの世界に入った気分」になれますね。
ただ、三重県津市で行われたジブリの展示会と違い、スタッフの方が撮影のお手伝いをしてくれないのは非常に残念に感じました。
地元ならではの展示 ― 中日ドラゴンズコーナー
そして愛知会場ならではの特別展示といえば「中日ドラゴンズコーナー」。
鈴木さんが熱心なドラゴンズファンであることは知っていましたが、これほどまでに野球愛が前面に出た展示は予想以上でした。
往年の選手のグッズや直筆のサイン入りアイテム、当時の新聞記事、さらには応援グッズまで。ジブリとは直接関係ないものの、「好きなものへの情熱」が作品づくりにつながっていることを感じさせられました。地元ファンにとっても嬉しい内容だったと思います。
カオナシの読書部屋 ― 静かな人気スポット
さらに進むと現れるのが「カオナシの読書部屋」。
壁一面の本棚に囲まれた空間に、椅子に座ったカオナシが静かに本を読んでいます。その光景は奇妙でありながら、とても落ち着くものでした。
周囲に積み重ねられた本、柔らかなランプの灯り、静謐な雰囲気…。まさに「鈴木敏夫=読書」を体感的に示した空間。来場者が思わず写真を撮りたくなる気持ちもわかります。私も長い時間ここに腰を下ろしたい気分になりました。
クライマックス ― 油屋と不思議の町
展示のハイライトは、やはり『千と千尋の神隠し』に登場する油屋と不思議の町の再現セット。愛知会場限定、かつ全国巡回の中でも最大規模の仕掛けです。高さ約15メートル、体育館いっぱいにそびえ立つ油屋は圧巻でした。
昼の柔らかな光から、夕暮れ、そして夜の妖しい灯りへと移り変わる演出により、映画の中に迷い込んだような没入感が得られます。建物の周囲には食堂や土産物屋のような店も再現され、中に入り込んで写真撮影ができる場所もありました。
あの独特の異世界感を「実際に歩いて体験する」ことができるのは、まさに愛知会場ならでは。私は何度も立ち止まり、光が移ろう様子をじっくり眺めてしまいました。
フィナーレ ― 物販と湯婆婆のおみくじ
展示を見終えた後は、別棟に移動してグッズ売り場へ。
ここにはポストカードや文具、Tシャツ、トートバッグなど、ジブリ展限定のアイテムが所狭しと並んでいました。ファン心理をくすぐるものばかりで、つい買いすぎてしまいそうになります。
そして物販エリアの隣に設置されていたのが、巨大な湯婆婆の顔。
まるで映画のワンシーンのように口を大きく開け、その口の中からおみくじを引く仕掛けになっています。来場者が一人ずつおそるおそる手を伸ばして引いていく姿は、どこかコミカルで楽しい雰囲気。私も挑戦してみたところ、結果は「中吉」。
金運はぼちぼち、とのことでした。
展示を通じて感じたこと
「鈴木敏夫とジブリ展」は、ただジブリ作品の舞台裏を知るだけでなく、一人の人間がどのようにして「物語の担い手」となったのかを追体験できる展示でした。愛知会場限定の仕掛けも多く、最終会場としてふさわしい充実度。まさに「ジブリの源流に触れる一日」となりました。
今回の旅は、作品そのものではなく、その背後にいる「人」の生き方や感性に触れる時間でもありました。
地図
〒480-1342 愛知県長久手市茨ケ廻間1533−1