大府市歴史民俗資料館を訪ねて ― あいばまさやすの世界に触れる時間(愛知県大府市の旅:2025-06-21)
大府市歴史民俗資料館(愛知県大府市)
愛知県大府市の歴史や文化を知る拠点として知られる「大府市歴史民俗資料館」に訪れました。今回の訪問は、単なる地域資料の見学にとどまらず、思いがけない出会いと感動を得る時間となりました。特に、2階で開催されていた企画展「あいばまさやすの世界」では、地域に根ざした表現者の作品に心を揺さぶられる体験をしました。
館内へ入る
資料館は大倉公園の一角に位置し、四季折々の自然に囲まれています。外観は落ち着いた佇まいで、館内に足を踏み入れると、木の温もりを感じさせる空間が広がっています。受付を済ませ、まずは1階の常設展示から順に見ていきました。
1階 常設展示 ― 地域の暮らしを伝える品々
1階は大府市の歴史や民俗文化を紹介する常設展示が中心です。かつての農具や生活道具、地域の祭りに使われた道具などが整然と並べられており、生活の息遣いが伝わってきます。農業に関する展示では、鍬や箕、木製の水車模型などが置かれ、当時の農家の暮らしや技術を肌で感じることができます。また、昔の台所や茶の間を再現した展示もあり、当時の家族の暮らしぶりや食卓風景を想像しながら見学することができます。
その一角に、ひときわ目を引く展示がありました。それは「模型車」のコーナーです。精巧に作られた自動車や列車がずらりと並んでおり、まるで小さな博物館のようです。近づいて解説を読むと、これらは職員の あいばまさやす氏 がすべて紙で作り上げた作品だということです。驚くほどの精密さとリアルさに思わず見入ってしまいました。しかもこれらはテレビ番組「ぐっさん家」(東海テレビ)でも紹介されたことがあるというから、その完成度の高さもうなずけます。
紙という身近な素材から生まれた模型車は、工業製品の正確な再現にとどまらず、どこか温かみを感じさせます。まるで作り手の人柄がにじみ出ているようで、展示室を歩く人々も足を止めて感嘆の声を上げていました。
2階 企画展「あいばまさやすの世界」
階段を上がった2階では、2025年6月21日から開催されている企画展「あいばまさやすの世界」に出会いました。館内職員として働くかたわら、自ら創作活動を続けてきたあいば氏。その世界観を一堂に紹介する企画展です。
会場に入ると、壁一面に色鮮やかな作品が並び、独特の表現世界が広がっていました。
中でも印象的だったのは、「特攻花(テンニンギク)」を題材にした作品です。テンニンギクは燃えるような赤と黄色の花を咲かせる植物で、戦争と平和をめぐる思索と重ね合わせたあいば氏の象徴的なモチーフでもあるということです。その花びらの鮮烈な色彩に、過酷な時代に散っていった命への祈りと未来への希望が込められており、少し目尻が熱くなるほど感動しました。
展示を見ていると、単に美しい絵や作品を眺めるという感覚を超え、作り手の人生や思いを受け取るような感覚に包まれました。地域に暮らし、地域に働きながら、自らの手で世界を描き出す。その姿勢に胸を打たれました。
今回の訪問では、「あいばまさやすの世界」という企画展を通じて、地域に根ざした創作とその力強さに出会えました。紙で作られた模型車の精巧さ、テンニンギクを描いた作品の情熱。それらは大府市の歴史を学ぶ時間を超えて、人の営みと想いに触れる体験となりました。
地図
5丁目-74-180−1 桃山町 大府市 愛知県 474-0026