大倉公園から歩く ― 桃山公園と川池公園めぐり(愛知県大府市の旅:2025-06-21)
桃山公園と川池公園(愛知県大府市)
大府市を歩く旅。今回のスタートは、大府市のシンボル的な存在でもある大倉公園でした。明治から昭和初期にかけて、この地の産業や文化を支えた大倉和親ゆかりの庭園であり、風格のある茅葺門や竹林の小径、そして休憩棟などが印象的な場所です。朝から園内を散策したあと、私はさらに足を伸ばし、別の公園を訪ねることにしました。目指すのは「桃山公園」と「川池公園」。いずれも大府市内にありながら、性格がまったく異なる公園です。
坂の上の桃山公園
最初に訪れたのは「桃山公園」。大倉公園から市街地を抜け、住宅街の坂を上がっていくと見えてきます。文字通り小高い丘の上にある公園で、その名の通りかつては桃の果樹園が広がっていた場所です。
大正から昭和初期にかけては、なんと3万本もの桃の木が植えられていたと伝えられます。桃の花が一面に咲き誇る春の風景は、さぞかし華やかだったことでしょう。その記憶が「桃山」という地名となり、今も残されているのです。
公園の敷地は決して広大というわけではありませんが、起伏があり、ところどころに小さな広場や遊具が点在しています。散策路をたどっていくと、ベンチや藤棚もあり、春や初夏の季節にはのんびり腰をかけて花を眺める人の姿も見られるでしょう。
しかし、ここで私が最も印象深く感じたのは、公園中央にそびえる高さ17メートルの巨大な風車モニュメントです。
遠くからでも目に入るこの白い風車は、ただのモニュメントではなく、展望台として利用できるようになっています。螺旋階段を登りきると、一気に視界が開け、眼下に大府市内の街並みが広がります。
西を見れば知多半島方面、東を望めば三河の山並みまで。
高台から吹き抜ける風を感じる時間は、とても爽快で、心まで解き放たれるようです。
「ここに住む人々は、日常の中でこんな景色を楽しめるのか」と思うと、少し羨ましささえ覚えました。
春には桜も見どころです。坂道に沿って植えられた桜並木は、公園全体をピンク色に染めあげ、桜祭りの時期には多くの人で賑わうでしょう。歴史ある果樹園の名残を受け継ぎながら、新しい憩いの場として親しまれる桃山公園。高台からの眺望とともに、大府という町の魅力を感じさせてくれる場所でした。
水辺に寄り添う川池公園
桃山公園を後にし、坂を下って住宅街を歩いていくと、次の目的地「川池公園」にたどり着きます。
こちらは桃山公園とはまったく趣が異なる公園で、まず目に入るのは大きな池。かつて農業用のため池として利用されていた「川池」を活かしつつ、東海豪雨を契機に治水機能を備えた調整池として改修されたものです。つまり、洪水を防ぐ役割を担いながら、市民の憩いの場として整備されているのです。
池の周囲には遊歩道が整備され、1周わずか数百メートル。水面を渡る風を感じながら歩いていると、ほどよい散歩道として心地よさを感じます。
公園の東側には多目的広場が広がり、バスケットボールのゴールが2基設置されています。こうしたスペースは、世代を超えて人が集まり交流できる貴重な場でもあります。
川池公園には専用駐車場はありませんが、そのぶん地域に根ざした「歩いて訪れる公園」という性格が強いように感じました。周囲には住宅や公共施設があり、日常の暮らしの一部として親しまれている様子が伝わってきます。
都市化が進む中で、水辺を身近に感じられる公園は貴重です。川池公園は、治水という実用性と市民の憩いの場という両面を併せ持ち、災害と共生しながら暮らす町の姿を映し出しているようでした。
桃山公園の風車モニュメントも確認できます。
大府市で感じた公園の魅力
今回の大府市の旅は、大倉公園を出発点に、桃山公園、川池公園とめぐるルートでした。わずか駅周辺を歩いただけで、これほど特徴的な公園に出会えるとは思っていませんでした。大倉公園は歴史と文化の香りを伝える場。桃山公園は丘の上の展望と桜の名所。そして川池公園は水辺の散策路と地域の日常を支える治水池。それぞれの公園が異なる個性をもちながら、市民に開かれています。
都市部からのアクセスも良く、駅から歩ける範囲にこれほどの緑地があるというのは、大府市の大きな魅力だと思います。住宅街のすぐそばに自然と触れ合える環境があることは、日々の暮らしに豊かさをもたらしてくれるはずです。
これにて大府市の散策の旅はおしまい。
地図
〒474-0026 愛知県大府市桃山町4丁目