中村公園をめぐる旅 ―豊臣秀吉ゆかりの地に新しい息吹を感じて― ( 名古屋市中村区の旅 : 2025-07-12 )
Contents
中村公園・豊国神社( 名古屋市中村区 )
名駅から中村公園へ、少しわかりづらい出発点
今回の旅の舞台は、名古屋市中村区にある「中村公園」です。
過去に3度訪れたことがある公園なのですが、思い返せばそのすべてが「お祭りの日」。屋台の並ぶ参道、にぎやかな境内、そして人波に押されながらの散策。ゆっくりと園内を歩いたことは一度もありませんでした。今回は、静かな季節の午後にあらためて訪れてみようと思い立ちました。
旅のスタートは、名古屋駅・太閤通口のバス乗り場から。

中村公園行きの市バスはあるものの、このバス停が少々やっかいです。名駅の中心部から大通りを抜け、少し離れた場所にあり、徒歩で10分ほどかかります。観光客の立場からすると、初見では少しわかりづらい印象。時間を気にする方や初めて訪れる方には、地下鉄で行くのが断然おすすめです。名古屋市営地下鉄東山線の「中村公園駅」からなら、徒歩ですぐ公園の南口に着きます。
そんなこんなで、バスに揺られることしばし。
「中村公園」バス停に到着しました。
公園の南口、道路を挟んですぐ目の前には老舗の「料理旅館かとう」があります。落ち着いた雰囲気の建物が印象的で、旅館前のバス停からのアクセスはとても便利。次回はぜひ立ち寄りたいと思わせるお店です。
豊臣秀吉ゆかりの地、中村公園と豊国神社の歴史
中村公園といえば、何といっても豊臣秀吉(木下藤吉郎)生誕の地として知られています。
もともとこの一帯は、戦国時代には中村庄と呼ばれる農村地帯でした。天文6年(1537年)、この地で生まれたのが後の天下人・豊臣秀吉。江戸時代に入り、秀吉を祀る「豊国神社(とよくにじんじゃ)」が創建され、以来、この地域は“太閤さん”ゆかりの地として人々に親しまれてきました。
明治時代になると、秀吉の偉業を顕彰する目的でこの「中村公園」が整備されます。公園の中心に豊国神社が鎮座し、その周囲を緑豊かな池や広場が囲む構成。昭和初期にはさらに文化施設や競技場が整備され、名古屋市を代表する歴史公園のひとつとなりました。
過去に訪れたときは、お祭りの賑わいの中で境内の記憶しか残っていなかったのですが、今回はゆったりと園内を歩きながら、改めてその広さに驚きました。
南から北へ、そして競輪場の西側や東側へと、思っていた以上に広大。園内には木々の小径が続き、ベンチで休む人、ウォーキングする人など、それぞれの時間を過ごしています。市街地の中心部にあるとは思えない静けさに包まれました。
工事中のエリアと「豊臣ミュージアム」建設
私にとって中村公園といえば、真っ先に思い出すのは園内にあった小さなステージです。
以前訪れたお祭りの際、このステージでは踊りや演奏が行われていて、その光景がとても印象に残っています。今回、久しぶりにその場所を見に行ってみたのですが、残念ながら立ち入り禁止のフェンスが設けられ、工事中になっていました。
どうやら、現在このエリアでは「豊臣ミュージアム(仮称)」の建設が進められているとのこと。開館予定は令和8年(2026年)1月24日。豊臣秀吉とその時代を多角的に紹介する新しい文化施設として整備が進められています。
完成後は、秀吉ゆかりの品々や中村公園の歴史展示などが予定されているそうで、まさにこの地の象徴ともなる存在になりそうです。
ステージが姿を消すのは少し寂しい気もしますが、公園全体が新しい形に生まれ変わろうとしているのだと感じました。東エリアの遊具広場もすでに整備が進み、カラフルな遊具や安全なクッション舗装が施されています。親子連れの姿も多く、地域の憩いの場としての役割をしっかり果たしている印象です。
公園中央の豊国神社に参拝
公園の中央部に位置するのが、豊臣秀吉を祀る豊国神社。

立派な鳥居をくぐると、まっすぐに延びる参道の先に、社殿が見えます。歴史の重みを感じさせながらも、どこか明るく、庶民的な温かさを持った空間です。境内には、秀吉の出世にあやかろうと願う参拝者の姿もちらほら。私も手を合わせ、小さく祈りました。
歴史の中の人物としての秀吉ではなく、一人の人間としての温もりを感じる場所でもありました。
文化プラザやスポーツセンター、そして競輪場へ
豊国神社の参拝を終え、公園北側にある「中村公園文化プラザ」に立ち寄ります。

ここでは地元の歴史展示や文化講座、演奏会などが開催されており、市民に開かれた文化拠点となっています。館内の展示コーナーには、秀吉や加藤清正に関する資料もあり、地域と歴史の結びつきを感じられました。
公園の北東には「中村スポーツセンター」。
市民プールやトレーニングルーム、体育館が整備されております。
さらに公園北西部を少し歩くと名古屋競輪場のゲートが見え、ここが多様な顔を持つエリアであることがわかります。

歴史とスポーツ、文化がひとつの公園を中心に共存している。その融合が中村公園の魅力のひとつでもあります。
妙光寺と常泉寺、秀吉のルーツをたどる
公園を後にして、近くの寺院も訪れてみました。まず向かったのは「妙光寺」。
ここは豊臣秀吉の生家跡に建てられたと伝わる寺で、境内には「太閤誕生の地」の石碑が立っています。秀吉が幼少期を過ごしたとされるこの地に立つと、天下人の原点を感じるような不思議な静けさに包まれました。
次に足を運んだのは「常泉寺」。

こちらは、秀吉が幼名「日吉丸」として元服した地とされる寺院です。創建は天文年間(16世紀中頃)と伝わり、境内には秀吉公産湯の井戸、加藤清正の産湯の井戸など、戦国武将にまつわる史跡が点在しています。境内はきれいに手入れされ、地域の人々の信仰と誇りが今も息づいていました。
この二つの寺を歩いていると、中村公園が単なる都市公園ではなく、戦国史の舞台そのものであることを実感します。
華やかなお祭りの喧騒の裏に、静かに息づく歴史の層。名古屋の中でも、これほど豊臣ゆかりの史跡がまとまって残る地域は珍しいといえます。
時代とともに姿を変えながらも、人々が集い、祈り、語らう場所であり続ける。そんな中村公園の懐の深さを感じる旅となりました。
地図・アクセス
〒453-0053 愛知県名古屋市中村区中村町高畑68



















































