約4年ぶりの「馬籠宿」へ 石畳の坂道と山の幸に癒された、心満ちる旅時間 (岐阜県中津川市の旅:2025-07-14)
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馬籠宿(岐阜県中津川市)
JR中津川駅から馬籠宿へ 再訪の期待を胸にスタート
今回の旅の舞台は、岐阜県中津川市にある馬籠宿。
人生で3度目の訪問で、前回は2021年。それから約4年ぶりとなります。季節が変われば景色も空気も大きく表情を変える場所なので、久しぶりというだけで胸の高鳴りが止まりません。
旅のスタートはJR中津川駅。

周辺には苗木城跡や馬籠宿などの観光スポットが多く、平日にも関わらず駅前には多くの観光客。そしてタクシーがずらりと並び、すでに旅の活気が感じられます。
運よく10分後に北恵那交通の「馬籠線」が出発するタイミングだったため乗車。先頭席を確保できたおかげで、車窓から山々の景観を存分に楽しむことができました。青い空と高い山の稜線、風に揺れる緑を眺めていると、日常から旅の世界へすっとスイッチが切り替わっていきます。
馬籠宿は、江戸時代に整備された旧中山道六十九次のうち、江戸から数えて43番目の宿場町です。山の中腹に位置し、急な石畳の坂道が特徴で、木造建築の建物が連なる姿は往時の面影を現在に伝えています。明治の大火で焼失後に再建されましたが、景観の調和は保たれ、島崎藤村の生誕地としても知られる観光地です。文学の舞台としての側面だけでなく、宿場町として旅人を迎え、休ませ、送り出してきた歴史が息づいています。資料館や食事処、宿屋が並び、歩くだけで江戸期の旅人気分を味わえる魅力的なスポットです。
石畳の坂道と清水屋資料館 歴史が息づく景観の中へ
バス停は馬籠宿の下側にあるため、到着するとすぐ長い坂道が始まります。訪れるたびに「馬籠宿BASE」など新しい施設が増えており、古い街並みの中に新たな息吹が加わっていることが伝わってきます。観光への力の入れ具合に訪問のたび驚かされます。
この日は平日。人は少ないかと思いきや、観光客は意外と多め。ただ日本人よりもむしろ外国人観光客が圧倒的に多く、体感では7割ほどが外国人でした。馬籠宿が世界中の旅人を惹きつけていることを実感します。
しばらく歩くと、大きな水車が目の前に現れます。勢いよく回る水車の音と川のせせらぎが耳に心地よく響き、馬籠宿らしい光景に思わず足が止まります。そのすぐ近くにあるのが清水屋資料館。

館内には、島崎藤村の書簡、掛軸、写真、江戸時代の文書や書画、伊万里や唐津の陶磁器などが展示されています。文学や古美術に詳しいわけではない私でも「貴重な資料が並んでいる」ということが素直に感じ取れる展示内容でした。明治・大正の写真が見せてくれる生活の息づかいも印象的で、馬籠宿が歩んできた時間の重みがじっくり伝わってきます。
資料館を出て再び坂道へ。
木造の歴史ある建屋、川沿いの新緑、丁寧に敷き詰められた石畳、そして雲ひとつない青空。
それぞれがひとつの景色としてまとまって視界に広がると、まるで江戸期へタイムスリップしたかのような錯覚に包まれます。何度訪れても、馬籠宿には心を揺さぶる瞬間があります。
坂の頂上付近に立つ「馬籠宿 高札場跡」に到着。

かつて幕府からの法令を庶民に伝える目的で高札が掲げられていた場所で、現在は正徳年間(1711〜1716)に発布された御朱印・切支丹・薬品に関する定書と、明和7年〜寛政6年(1770〜1794)の徒党禁止令の定書が復元され掲示されています。歴史的景観の中にこうしたスポットが自然に溶け込んでいるのも馬籠宿の魅力です。
展望台からの大景観と大黒屋茶房の山の幸で旅の幸福が満ちていく
さらに坂を登り、今回の旅の最終地点「馬籠上陣場展望台」へ。

到着した瞬間、目の前に広がったのは山々の新緑の大パノラマ。背後には恵那山がどっしりと構え、雄大な自然を前に言葉を失ってしまうほどの絶景でした。しばらくベンチに腰をかけ、風と景色を味わう時間は格別。歩いてきた道のりをそっと包み込むような安らぎの瞬間でした。
ここからはUターンして下り。

上りの景色も美しいですが、下りは正面に遠い山並みが広がり、より開放感があり、心が弾みます。店先の香ばしい香り、石畳に差し込む光、旅人たちの話し声が心地よいBGMのように響き、足取りは自然と軽くなります。
そして旅の締めくくりに選んだのは大黒屋茶房。
前回訪問した際に強く感動した店で、今回も迷わず再訪しました。木の温もりが室内に広がり、窓からは坂道の宿場の風景。落ち着いた時間の流れの中でゆっくり食事が楽しめます。
いただいたのは 定食B(2,100円)。
栗おこわ、虹鱒の甘露煮、山菜、小鉢、きのこ入りわんこ蕎麦、香の物、フルーツと贅沢な内容。
和食、とりわけ海の幸が好きな私ですが、山の幸も同じくらい大好きで、この定食はまさに理想の味が詰まっていました。栗おこわは香り・甘味ともに格別、虹鱒の柔らかさと優しい甘さは思わず笑みがこぼれるほど。山菜の深い味、きのこ入りそばの喉ごしも最高で、ひと口ごとに満足が積み上がっていきます。「毎日でも食べたい」と思えるほど心に残る定食でした。
窓の外を眺めながら食事をしていると、旅の時間がゆっくり終わりに向かっていくのを感じます。
馬籠宿の空気、景観、歴史、そして食。そのすべてをしっかりと堪能できた、満ち足りた旅となりました。
地図
〒508-0502 岐阜県中津川市馬籠
















































































