安土駅からはじまる、信長の記憶をたどる旅――安土と西の湖、よしきりの池へ ( 滋賀県近江八幡市の旅 : 2025-09-27 )
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安土駅・西の湖・よしきりの池(滋賀県近江八幡市)
2025年9月27日。
少しだけ空気がやわらぎ、秋の気配が混じりはじめた朝、名古屋駅からのぞみ新幹線に乗り込みました。向かう先は、滋賀県・近江八幡市安土町。言わずと知れた、織田信長が築いた安土城の地です。
安土城――。
日本史の教科書で何度も目にし、その名を聞くたびに、いつかは訪れたいと思い続けてきました。ただ、最寄りの安土駅は普通列車しか停まらず、米原からもやや距離がある。そんな理由もあって、気持ちだけが先走り、訪問は後回しになっていました。
それが今回、ようやく実現。少し大げさですが、長年胸の奥に引っかかっていた宿題を、ひとつ片づけに行くような気分でした。
安土駅に降り立つ
米原駅で在来線に乗り換え、ほどなくして安土駅に到着。

観光地の最寄り駅とはいえ、ここはあくまで普通駅。ホームは広すぎず、どこか素朴な佇まいです。その静けさが、かえって旅情を誘います。
改札を抜けると、駅舎は北口と南口に分かれています。今回は観光口でもある北口へ。
駅舎を出て東側に目をやると、新緑に包まれた繖山(きぬがさやま)がゆったりと横たわっています。やわらかな稜線が印象的で、思わず足を止めてしまいました。
ちなみに、この繖山を越えた向こう側には、以前訪れた五箇荘の町並みが広がっています。点と点だった記憶が、ここでふと線につながったような感覚。近江の地は、こうして静かに連なっているのだと実感します。
信長公像と城下町の空気
北口に進むと、駅前のバスターミナルで織田信長公像が出迎えてくれます。
凛とした立ち姿は、この町がいまも「信長の城下」であることを雄弁に物語っていました。
周囲の建物も、どこか城下町らしい意匠。派手さはありませんが、統一感のある落ち着いた景観です。
ただ、周辺の観光地まではやや距離があるため、今回は徒歩ではなくレンタサイクルを選択。駅前にある「安土駅前レンタサイクルたかしま」で自転車を借り、まずは安土城跡へ……といきたいところですが、その前に立ち寄りたい場所がありました。
内湖・西の湖を目指して
それが、西の湖。
近江八幡市に点在する内湖のひとつで、琵琶湖とゆるやかにつながる水辺です。せっかく安土まで来たのなら、この風景を見ずには帰れません。
とはいえ、ここでひとつ誤算が。
この10年、ほとんど自転車に乗っていなかったせいか、ペダルを漕ぎはじめてすぐに違和感が……。お尻が、痛い。
久しぶりの自転車は、思った以上に体にこたえます。立ち漕ぎを交えながら、県道199号、201号、511号を抜け、ひたすら北へ。
疲れはありますが、風を切って走る感覚は心地よく、少しずつ勘も戻ってきました。
海のようで、海ではない風景
しばらく進むと、左手に水面が広がってきます。

一瞬、海かと思うほどの開放感。しかし、塩の香りはなく、波もおだやか。湖とも少し違う、不思議な水景です。
名古屋に暮らしていると、こうした景色に出会う機会はなかなかありません。広がる空と水面を眺めていると、時間の流れがゆっくりになっていくようでした。
途中には「西の湖すてーしょん」というカフェもありましたが、まだ走りはじめたばかり。休憩には少し早い気がして、今回は通過することにします。
よしきりの池――音が名付けた場所
西の湖に沿って、さらに西へ。
やがて到着したのが「よしきりの池」です。
この一帯は、西の湖に隣接する低湿地と水辺環境が広がる場所。古くからヨシ(葦)が群生する静かな池として、地元の人々に親しまれてきたそうです。
そして、この池の名前の由来が興味深い。
「よしきり」とは、ヨシ原に生息する鳥・オオヨシキリ(大葦切)にちなむもの。初夏になると、「ギョギョシ、ギョギョシ」と非常に賑やかな鳴き声でさえずることで知られています。
風景や地形ではなく、“音”が名前のもとになっている池。
そう聞くだけで、目に見えない季節の気配や、かつての賑わいが想像できるのが面白いところです。
静かな水面を前にしながら、耳を澄ませば、いつか聞こえてくるかもしれないその声に思いを馳せました。
思いがけない発見。
この場所に立てたこと自体が、今回の旅の収穫だったように思います。
いよいよ、安土城へ
名残惜しさを感じつつ、ここからは再び東へ。
次なる目的地は、安土城跡。信長が思い描いた壮大な城と、その舞台となった山が待っています。
自転車を走らせながら、少しずつ気持ちが高まっていくのを感じました。
歴史の表舞台でありながら、いまは静かに佇むその場所で、何を感じるのか――。
安土城(跡)への登城記は、次回のブログで。
どうぞ、お楽しみに。
地図
〒521-1341 滋賀県近江八幡市安土町上豊浦

















