船頭平閘門と船頭平河川公園を訪ねて (愛知県愛西市の旅 : 2025-11-15)

 

 

船頭平閘門・船頭平公園・木曽川文庫(愛知県愛西市)

長島町の輪中ドームでひと息ついたあと、私は再び歩き出した。目指す方向は北。木曽川の流れに寄り添うように延びる歩道を辿り、三重県から愛知県愛西市へと進む行程だ。


歩いているうちに県境を越え、気づけば愛西市に入っていた。行政境界は、歩いている限りではほとんど意識できない。ただ、道沿いの標識や町名表示を見て、「ああ、ここから愛知県なのだ」と実感する。

川沿いの風は少し冷たく、歩くリズムを整えてくれる。遠くを走る車の音と、足元の砂利を踏む感触が、単調になりがちな行程に心地よい変化を与えてくれた。

神明神社で旅の無事を祈る

しばらく歩くと、小さな集落の中にひっそりと佇む神社が現れた。神明神社である。


神明神社は、全国各地に点在する地域の氏神として祀られてきた神社の総称で、「神明」という名が示すとおり、伊勢神宮の御祭神・天照大御神を主祭神とする点が大きな特徴だ。

鳥居をくぐると、周囲の空気がふっと静まる。派手な装飾はないが、長く地域に寄り添ってきたことを感じさせる落ち着いた境内。
旅の無事と、ここまで歩いてこられたことへの感謝を胸に、静かに手を合わせた。こうした立ち寄りは、歩き旅において欠かせない節目になる。

丘を越え、船頭平公園へ

神明神社を後にし、さらに北へ。やがて道は緩やかな上り坂となり、大きな丘を越える。視界が再び開けた瞬間、現れたのが船頭平河川公園だった。

船頭平河川公園は、愛知県愛西市立田町に位置し、国営木曽三川公園の一部として整備された河川公園だ。入園は無料。四季折々の花や川辺の景色を楽しめる場所として、地元の人々にも親しまれている。
広々とした園内は、歩き続けてきた身体をゆるやかに受け止めてくれるようだった。

船頭平閘門という存在

この公園の最大の見どころは、国指定重要文化財である船頭平閘門。


明治35年(1902年)に完成したこの閘門は、木曽川と長良川の水位差を調整し、船を安全に通すために造られたものだ。煉瓦と鉄を用いた重厚な構造は、100年以上の歳月を経た今も圧倒的な存在感を放っている。

江戸時代から明治にかけて、木曽川・長良川・揖斐川は洪水が頻発する河川だった。これを根本的に改善するため、明治政府は大規模な治水事業、いわゆる「明治改修」を実施する。
三つの川を完全に分離し流れを安定させる「三川分流」によって洪水被害は軽減されたが、同時に舟運のルートは分断されてしまった。

その課題を解決するために設けられたのが閘門であり、船頭平閘門はその代表例である。

閘門の仕組みを知る

閘門(lock)は、水位の異なる川同士を船が行き来するための水門システムだ。
船が入口に入ると門を閉じ、閘室内の水位を調整する。反対側の川と同じ水位になったところで門を開き、船が通過する。
この単純だが精密な仕組みにより、川の高低差を克服して舟運が成り立っていた。

船頭平閘門は、複閘式と呼ばれる形式を採用しており、内開きと外開きの二重の門扉を備える。これは日本でも初期の例とされ、当時の最先端技術が投入されていたことがわかる。

現在使用されている閘門とは別に、旧船頭平閘門の遺構も公園内に保存されており、技術の変遷を間近で見ることができる。

前々から気になっていた場所だっただけに、実際に訪れることができた喜びは大きかった。

ヨハネス・デ・レーケの銅像

公園内には、オランダ人土木技師ヨハネス・デ・レーケの銅像が建てられている。


明治政府に招聘され、日本各地の治水工事を指導した人物で、特に木曽三川の下流改修と三川分流事業に深く関わった。
この地域の洪水対策と水害防止に大きく貢献した存在として、今も評価されている。

銅像の前に立つと、近代日本の治水が多くの知見と努力の積み重ねによって成り立っていることを実感する。

木曽川文庫で学ぶ

船頭平閘門の近くには「木曽川文庫」という小さな展示施設がある。


濃尾平野の治水史や、川と人々の暮らしに関する資料がコンパクトにまとめられており、短時間でも理解を深められる内容だ。
歩き旅の途中で気軽に立ち寄れる点もありがたい。

いよいよ海津市へ

船頭平閘門付近からは、今回の旅の最終目的地である岐阜県海津市の国営木曽三川公園 木曽三川公園センターを遠望することができた。
視界の先に見える景色に、自然と気持ちが高まる。

ここからは168号線に沿って、ひたすら北上する行程。ただし道路工事の影響で、国営木曽三川公園 東海広場の河川敷沿いへと迂回を強いられた。
距離以上に体力を削られる道のりだったが、それでも一歩ずつ前へ進む。

そしてついに、愛西市から岐阜県海津市へ。
長い一日の歩き旅は、いよいよ終盤を迎えた。

木曽三川に導かれるように歩いてきた今回の行程。
次のブログでは、国営木曽三川公園 木曽三川公園センターを中心に、三川が織りなす風景と公園の魅力をじっくりと綴る予定だ。

住所 / 地図

〒496-0946 愛知県愛西市立田町十六石山

 

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