旧市川家住宅と野方三ツ池公園:日進の歴史と水辺の風景を巡るウォーキング(愛知県日進市の旅 : 2026-01-10)

 

 

旧市川家住宅と野方三ツ池公園(愛知県日進市)

日進市を巡るウォーキング旅。白山宮から道の駅を経由し、休憩を挟んだ日進市スポーツセンターを後にします。ここからはさらに西へと歩みを進め、江戸時代から続く歴史の足跡と、市民に愛される水辺の公園を訪ねるルートをご紹介します。


県道58号線の緊張感と、突如現れる歴史の門

日進市スポーツセンターを出発し、進路を西に取ります。ルートは県道58号線。この道は日進市の主要な動線の一つですが、実際に歩いてみると、ウォーキングには少しばかりの注意が必要です。

沿道には歩道が整備されていない箇所が点在し、その一方で交通量は非常に多く、車両がかなりの速度で通り抜けていきます。背後から迫る車の音に少し気を引き締めながら、路肩を慎重に歩きます。都市近郊のウォーキングでは、こうした「生活道路のリアル」に直面するのもまた、一つの体験と言えるかもしれません。

そんな緊張感のある道を10分ほど進むと、右手に周囲の風景とは一線を画す、重厚な建物が見えてきます。ここが今回の主要スポットの一つ、旧市川家住宅です。


18世紀の息吹を伝える、野方村の庄屋屋敷

旧市川家住宅は、かつてこの地の「野方村(のかたむら)」で庄屋を務めた市川藤蔵家の住まいです。単なる個人の邸宅ではなく、地域の行政や農村運営の拠点として機能していた、歴史の重みを感じさせる場所です。

伝承によれば、もともとは現在の名古屋市天白区植田にあった庄屋宅を、明和6年(1769年)にこの地へ移築したとされています。しかし、近年の詳細な調査によって、宝永6年(1709年)の年記を持つ墨書が発見されました。これにより、建物の起源は18世紀初頭にまで遡ることが明らかになっています。300年以上の時を超えてここに存在し続けているという事実に、改めて圧倒されます。

2015年からは一般公開されており、入場料は無料。単に建物を保存するだけでなく、地域の人々が縁側でくつろいだり、ワークショップに参加したりできる「開かれた歴史施設」として活用されています。

建築に宿る職人の知恵と美学

外観は、現在は保護のために鋼板で覆われていますが、本来は茅葺き屋根を持つ重厚な佇まいです。中に入ると、当時の農村建築の粋を集めたような見どころが随所に散りばめられています。

  • 四つ建て(鳥居建て)の堅牢な構造 この住宅で最も注目すべきは、尾張地方の民家特有の「四つ建て(鳥居建て)」と呼ばれる骨組みです。土間と居住空間の境に立つ4本の太い柱が梁で強固に組まれ、建物全体の荷重を支えています。現代の住宅ではまずお目にかかれない、ダイナミックで合理的な木組み。天井を見上げると、その力強さに当時の大工技術の高さが透けて見えます。

  • 「仕事」と「暮らし」が交差する土間 玄関を抜けると広がる大きな土間。ここはかつて、かまどでの調理や農作業が行われていた、生活の心臓部でした。そこから板の間、そして奥の座敷へと緩やかにつながる動線は、生活と仕事が表裏一体であった時代の空気感を現代に伝えてくれます。

  • 季節を映すしつらえと、縁側の時間 旧市川家住宅では、年中行事に合わせた装飾が大切にされています。私が訪れたこの日は、新年を祝う門松飾りが設えられていました。歴史的な空間の中で見る季節のしつらえは、日本の伝統的な美意識を再認識させてくれます。

縁側に腰を下ろすと、庭から差し込む柔らかな光が室内を照らします。県道沿いの喧騒が嘘のような、穏やかな時間が流れる特等席です。


水辺の潤いと市民の憩い:野方三ツ池公園

旧市川家住宅で歴史の奥行きに触れた後は、道路を挟んで向かい側にある野方三ツ池公園へと足を運びます。

ここは、日進市の住宅街にありながら、豊かな水と緑を湛えたオアシスのような場所です。園内には池を囲むように遊歩道が整備されており、ウォーキングの締めくくりに歩くにはちょうど良い距離感です。

表情を変える遊歩道と地域の風景

池の周りを歩いていると、歩みを進めるごとに視点が変わり、水面の輝きや周囲の木々の表情が刻一刻と変化していくのが分かります。

公園内では、散歩やジョギングに汗を流す近隣の方々、そして広場で元気に遊びまわる親子連れの姿が多く見られました。子どもたちの賑やかな声が響き渡る様子は、この公園が単なる景勝地ではなく、地域の人々の生活に深く根ざした「憩いの場」であることを物語っています。

休憩所に佇む「森の精」との再会

この公園を散策する際、ぜひ立ち寄ってほしいのが休憩スペースです。そこには、愛知県民にはお馴染みのキャラクター、モリゾーがさりげなく置かれています。

2005年の「愛・地球博(愛知万博)」から20年以上が経過した今でも、モリゾー(と相方のキッコロ)は愛知県の象徴として愛され続けています。水辺の静かな風景の中に、こうした遊び心のある演出があることで、公園全体の印象がぐっと柔らかく、親しみやすいものに感じられます。自然の癒やしと、地域が共有する文化的な記憶が、この場所にはゆるやかに共存しています。


旅の余韻:赤池方面へ向けて

野方三ツ池公園を後にし、ルートは住宅街を南西へと抜けていきます。目指すは「プライムツリー赤池」方面。

道中、日進こ線橋に差し掛かると、眼下には「名古屋市交通局日進工場」の広大な敷地が広がります。整然と並ぶ地下鉄の車両たちを橋の上から眺める時間は、鉄道ファンでなくとも少し心が躍る光景です。

今回のウォーキングは、歴史ある庄屋屋敷から、活気ある市民の公園、そして鉄道のインフラを望む道へと、日進市の多彩な顔を繋ぐ旅となりました。

この後は、久しぶりに「レトロでんしゃ館」を再訪する予定ですが、そこでのノスタルジックな体験については、また次回のブログでじっくりとお伝えできればと思います。


【今回のウォーキングコース】

  • 日進市スポーツセンター(出発)

  • 県道58号線(交通量に注意)

  • 旧市川家住宅(尾張特有の四つ建て構造と正月飾りを堪能)

  • 野方三ツ池公園(水辺の散策とモリゾーとの出会い)

  • 日進こ線橋(地下鉄日進工場を一望)

一歩ずつ歩くことで見えてくる、日進市の深い魅力。歴史の風を感じ、水辺の平穏に癒やされる。そんなウォーキングを楽しんでみてはいかがでしょうか。

 


地図:旧市川家住宅

データ

  • 所在地:〒470-0123 愛知県日進市野方町東島384

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