国宝犬山城・天守閣|戦国時代の重要拠点としての意欲と、断崖にそびえる「現存」の真髄(後編)(愛知県犬山市の旅 : 2026-01-23)
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国宝犬山城・天守閣
国宝への再訪
2026年1月23日。前編に続き、旅の舞台はいよいよ今回のハイライトである「国宝犬山城」の有料エリアへと移ります。
現在、犬山城の大人入城料は1,000円となっていますが、私が訪れたこの日は、改定前の550円で入城できる最後のタイミングでした。約2年ぶりの再訪となりますが、単に「安いうちに来ておこう」という以上の期待が胸に膨らみます。それは、ここが単なる歴史的建造物ではなく、戦国という激動の時代を「生き抜く」ために設計された、本物の軍事要塞だからです。
鉄門(くろがねもん):戦国の緊張感への入口
入城券を手にし、まず我々を迎えるのが「本丸鉄門」です。この門をくぐる瞬間、周囲を包んでいた城下町の穏やかな喧騒がスッと消え、空気が張り詰めるのを感じます。
鉄門は本丸を守る最終防衛線。ここを突破されることは城の陥落を意味しました。門の重厚な造りは、単なる飾りではなく「ここから先は一歩も通さない」という強固な意志の表れです。この門の前に立つと、現代の観光客である私も、知らず知らずのうちに背筋が伸びる思いがします。
「現存」の理由は、その戦略的圧倒性にあり
犬山城が明治の廃城令や戦火、さらには天災を乗り越え、今日まで「現存天守」として残ることができた理由。それは、単に保存状態が良かったからだけではありません。その核心は、戦国時代においてここが「絶対に手放してはならない最重要拠点」であり続けたことにあります。
犬山城は、北側を木曽川の切り立った断崖に委ねた「後堅固(うしろかため)」の構えを持っています。この立地は、尾張(愛知)と美濃(岐阜)の境界を押さえる上で極めて重要な意味を持ちました。小牧・長久手の戦いにおいても、織田信雄・徳川家康連合軍と羽柴秀吉軍の間で、この拠点を誰が握るかが戦局を大きく左右しました。
つまり、これほどまでに合理的かつ堅牢な城は、時の権力者たちにとっても「壊すにはあまりに惜しい、完璧な戦略的資産」だったのです。戦うための道具として究極まで突き詰められた美しさが、結果として現代までその姿を留める原動力となった。そう考えると、目の前の天守閣がいっそう力強く見えてきます。
天守内部:機能美を体現する各階の構造
靴を脱ぎ、一歩足を踏み入れれば、そこには400年前の木の質感が残る世界が広がります。
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「穴倉」の重厚な土台: 地階にあたる「穴倉」は、石垣内部に組み込まれた基礎部分です。ここには太い梁が縦横に走り、上部の巨大な構造を支えています。ひんやりとした空気の中に、籠城時の備えとしての静かな覚悟を感じる空間です。
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「上段の間」と武者走り: 上層へ進むと、城主の威厳を示す「上段の間」が現れます。ここは軍議の場でもありました。周囲には兵が迅速に移動するための「武者走り」が巡らされ、一分一秒を争う戦場のリアリティが細部にまで宿っています。
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実戦を想定した「狭間」: 壁に設けられた「狭間(さま)」からは、外の様子を伺うことができます。内部からは広く見渡せ、外部からは狙われにくい。この合理的な殺傷能力こそが、城の本来の姿であることを思い出させてくれます。
最上階・望楼:支配者の視線と木曽川の絶景
急な階段を上り詰め、最上階である4階「望楼」に到達します。それまでの重厚な閉鎖空間から一転、四方が開けた開放的な空間へ。こここそが、犬山城が「国宝」たる所以を感じさせる最高のステージです。
廻縁(まわりえん)に出ると、眼下には悠然と流れる木曽川、そして前編で歩いてきた城下町がミニチュアのように広がります。このパノラマは、単なる観光スポットの展望ではありません。かつての城主が、敵軍の動きを察知し、自らの支配領域を確認した「監視の最前線」そのものです。
高欄が低く、床が外側へわずかに傾いているため、足元には現代の建築では味わえない独特の緊張感があります。しかし、その緊張感こそが「現存天守」を体験する醍醐味。濃尾平野の向こうに広がる山々を眺めていると、時代を超えて武将たちの野望や苦悩が共有されるような、不思議な感覚に包まれます。
次なる旅へ:犬山から世界一周の旅路へ
犬山城の奥深い歴史を堪能した後は、再び城下町を通って犬山駅へと戻ります。歩くことで体感するこの距離感も、旅の楽しみのひとつです。
犬山駅の東口に到着。ここから旅は第二幕へと移ります。名鉄バスに乗り込み、向かう先は「リトルワールド」。犬山の歴史探訪から、今度は世界各国の文化と食を巡る旅へとダイブします。
この日の午後は、一体どのような「世界」に出会えるのでしょうか。リトルワールドでの体験については、次の旅ブログにて詳しくご紹介します。どうぞお楽しみに!
地図:国宝犬山城・天守閣
データ
所在地:〒484-0082 愛知県犬山市犬山北古券65−2









































