明智駅周辺と大正浪漫の町を巡る(序章)――明知鉄道の車窓に揺られ、7年ぶりの明智町へ(岐阜県恵那市の旅:2026-02-21)

 

明智駅・大正村浪漫亭(岐阜県恵那市)

旅の始まりはJR恵那駅から

2026年2月21日。今回の旅の舞台は、岐阜県恵那市にある明智駅周辺です。

これまでにも東濃地方の魅力的なスポットをいくつか歩いてきましたが、今回はじっくりと時間をかけて、この歴史情緒あふれるエリアを散策することにしました。あまりにも見どころが多く、書きたいエピソードが溢れてしまうため、今回の記事を「序章」として、何回かに分けてその魅力をお届けしたいと思います。

旅のスタート地点となるのは、JR中央本線の恵那駅です。名古屋方面からのアクセスも良く、都市の利便性を残しながらも、ここから先へと続くローカル線の旅への期待を抱かせてくれる、まさにゲートウェイと呼ぶにふさわしい場所です。

今回乗車する明知鉄道の恵那駅は、このJR恵那駅にぴったりと隣接しています。乗り換えの導線も分かりやすく、初めて訪れる人でも迷うことはありません。

えなてらすでの穏やかなひととき

列車が出発するまでには、まだ少し時間がありました。そこで、駅のすぐお隣にある恵那市観光物産館「えなてらす」へと足を運んでみることにしました。

「えなてらす」は、恵那市の豊かな自然が育んだ特産品や、地元の人々に愛され続ける名菓、伝統的な工芸品などが一堂に会する素晴らしい施設です。広々とした館内をぶらぶらと歩いているだけで、これからの旅への期待がさらに膨らんでいきます。

棚には、恵那の名物として知られる栗を使ったお菓子や、地元産の新鮮な農産物加工品、素朴ながらも味わい深い地酒などが美しくディスプレイされていました。地域の情報発信基地としての役割も担っているため、観光パンフレットを眺めながら、今日のルートを頭の中で再確認するのにも最適な空間です。こうした出発前の何気ないひとときこそが、旅のプロローグを心地よく演出してくれます。


7年ぶりの明知鉄道、節分ロゴの列車に揺られて

時計の針が良い時刻を指したところで、いよいよ明知鉄道のホームへと向かいます。

私が明知鉄道の列車に揺られるのは、2019年7月4日に岩村駅を訪れ、岩村城下町を散策して以来、実に7年ぶりのことです。月日が流れるのは本当に早いものだと、改札をくぐりながらしみじみと感じてしまいました。

岐阜県恵那市の旅(「半分、青い。」ロケ地:岩村城下町)

ホームで待っていたのは、どこか懐かしく、同時に地域の人々に大切にされていることが伝わってくる車両。車両の前面には、季節感あふれる「節分」のロゴが掲げられています。こうした手作りの温かみを感じられるヘッドマークや装飾に出会えるのも、ローカル線ならではの醍醐味と言えるでしょう。

車内に一歩足を踏み入れると、そこには多様な乗客の姿がありました。地元の方々の生活の足としての穏やかな空気が流れる一方で、私のような旅人の姿も多く見られます。驚いたのは、日本人観光客だけでなく、海外からの旅行客の姿もちらほらと見受けられたことです。日本の原風景やローカル線の風情を求めて、遠く海外からこの東濃の地へと足を運ぶ人々がいる事実に、明知鉄道が持つ普遍的な魅力を再発見したような気がしました。

やがて定刻になり、列車はカタコトと心地よい音を立てて、恵那駅を静かに出発しました。


車窓に広がる、東濃の里山グラデーション

列車はしばらくの間、JR中央本線の立派な線路と並走するように走り、そこから滑らかにカーブを切って、南東方向へと進路を変えていきます。ここからが本格的な明知鉄道の旅の始まりです。

出発してすぐのタイミングでは、窓の外にはまだ見慣れた市街地の風景が広がっています。近代的なマンションや一戸建ての住宅、そして幹線道路沿いに並ぶお馴染みのロードサイド店舗など、恵那市の中心部としての都市機能が集約されたエリアを抜けていきます。

しかし、そんな近代的な景色の中にいられるのは、ほんの数分ほどのことでした。列車が街の境界線を越えると、車窓の景色は文字通り一変します。

気づけば、左手には見渡す限りののどかな田畑が広がり、右手には緩やかな稜線を描く低い山並みが迫ってきていました。それまでの「中央本線沿線の都市的な雰囲気」から、一瞬にして「東濃地方の美しい里山風景」へと切り替わるその劇的な瞬間は、何度経験しても胸が躍るものです。まるで、日常から非日常へと誘うタイムトンネルを通り抜けたかのような錯覚さえ覚えます。

東野駅を過ぎ、飯羽間駅へと向かう区間に差し掛かると、明知鉄道らしさがさらに本格化していきます。列車は地形に逆らうことなく、緩やかなカーブを何度も描きながら、山あいの懐深くへと進んでいきます。


見どころ満載の駅々、そして思い出の岩村と山岡

ここからは、明知鉄道の路線内でも屈指の見どころが連続する区間へと突入します。

まず最初に私の目を引いたのは、その非常にユニークな駅名で全国的にも知られている「極楽駅」です。名前に違わず、非常に小さく可愛らしい駅ですが、漂う旅情はひとしおです。

周囲をのどかな田園風景に囲まれ、ぽつんと佇むその単式ホームの姿は、まるで絵本の世界からそのまま飛び出してきたかのような不思議な情緒を醸し出しています。今回は車窓から眺めるだけでしたが、「いつかはここで途中下車して、この静寂を肌で感じてみたい」と思わせるに十分な魅力を放っていました。

列車はさらに進み、徐々に歴史の重みを感じさせる町並みへと近づいていきます。山々の合間を縫うようにして走ったのち、列車が滑り込んだのは、私が前回訪れた「岩村駅」でした。

ホームに到着した瞬間から、車窓越しでもはっきりと分かるほど、どこか“古い歴史を持つ町へとやってきた”という独特の空気感が漂ってきます。駅の周辺には、かつて「女城主の里」として栄え、今なお江戸時代の面影を色濃く残す岩村の素晴らしい城下町が広がっています。歴史好き、古い町並み好きにとっては、まさに聖地とも言えるエリアです。

やはり、明知鉄道における一番の観光地ということもあり、それまで車内を満たしていた乗客の実に8割ほどが、この岩村駅で一斉に降りていきました。賑やかだった車内が急に静かになり、ローカル線本来の落ち着いた雰囲気が戻ってきます。

岩村駅を出発すると、列車はさらに山里の深部へと足を踏み入れていきます。次に到着したのは「花白温泉駅」です。

その駅名が雄弁に物語っている通り、駅のすぐ目の前には温泉施設が存在しており、下車してすぐに湯浴みを楽しめるという、旅人にとってはたまらないロケーションとなっています。ここもまた、ローカル線ならではの旅情を激しく誘う場所であり、極楽駅と同様に「いつかはゆっくりと訪れてみたい町」として、私の旅のウィッシュリストに深く刻まれました。

そして列車は、私が先週、路線バスを利用して訪れたばかりの「山岡駅」へと到着します。

山岡駅のホームに佇む駅舎や周辺の景色を見た瞬間、先週「山岡駅かんてんかん」でいただいた、あの見事な「寒天御膳」の美味しさが鮮烈に思い出されました。地元の特産品を活かした料理の記憶は、その土地の風景と分かちがたく結びついているものです。

山岡駅かんてんかん:山岡町の寒天文化に触れる、明知鉄道沿線の至福ランチ(岐阜県恵那市の旅:2026-02-14)

山岡駅の周辺には、東濃地方独特の静かで洗練された山村風景がどこまでも続いています。盆地状の独特な地形の中に、小さな集落と美しい田園が点在しており、時折車窓から見えるビニールハウスや、この地域ならではの寒天干しの光景が、「山岡町へやってきたのだ」という実感を強くさせてくれます。


7年ぶりの終着駅、明智駅へ到着

山岡駅を過ぎると、列車はさらに小さな谷を越え、山の奥へ奥へと進路を取ります。

先ほど岩村駅で多くの乗客が降りたこともあり、車内は非常に空いており、ローカル線の終点間際ならではの、独特でどこか愛おしい静けさが満ち満ちていました。窓の外を眺めると、山裾にしがみつくようにして寄り添う民家が点々と見えます。

民家の煙突から細く立ち上る生活の煙、静かに畑仕事に勤しむ人影、そして山肌に沿って伸びる細い生活道路――。それらは観光地として美しく整えられた景色ではなく、そこに生きる人々の息遣いがそのまま伝わってくるような、「暮らしの中を走る鉄道」としての真摯な姿そのものでした。

やがて列車は「野志駅」を静かに通過。この駅を過ぎれば、終着駅まではもう目と鼻の先です。

速度を落とした列車は、ゆっくりと、そして滑らかに終着駅である「明智駅」へと滑り込みました。

ホームに降り立つと、そこにはローカル線の終着駅だけが持つ、特有の穏やかで優しい空気が満ちていました。都会の駅のような喧騒や急ぎ足の人は誰一人おらず、そこにある全ての時間が、通常よりも明らかにゆっくりとしたテンポで流れているかのような、不思議な感覚に包まれます。

過去の旅の記録を頭の中で手繰り寄せてみると、私がこの明智駅の改札をくぐったのは、2018年12月以来のことでした。気がつけば、こちらも約7年ぶりの訪問となります。年月を経て再び同じ場所に立つ喜びを噛み締めながら、駅舎を後にしました。


大正村浪漫亭と「お食事処かわかみ」でのランチタイム

明智駅周辺の散策を開始した私が、まず最初に向かったのは「大正村浪漫亭」です。

施設・店舗名 主な特徴・フロア構成
大正村浪漫亭 (1階) 恵那市の特産品を中心とした充実のお土産コーナー、カフェスペース
お食事処かわかみ (2階) 地元食材を使用したメニューが味わえる、地域に愛されるレストラン

大正村浪漫亭は、明智の町を訪れる観光客であれば、まず間違いなく立ち寄るであろう、まさにこの地域の観光拠点となっている施設です。駅からも歩いてすぐの場所にあり、その堂々とした佇まいは大正浪漫の雰囲気を早くも醸し出しています。

建物の1階に足を踏み入れると、広々としたフロアには充実したお土産コーナーが広がっています。

恵那市全体の特産品を中心に、お菓子から加工食品、雑貨に至るまでバラエティ豊かな商品がずらりと売られています。お土産選びに夢中になれるだけでなく、同フロアには居心地の良さそうなカフェも併設されており、散策の合間の休憩にもぴったりな構造になっています。

そして、今回の大きなお目当ての一つが、この建物の2階にあるレストラン「お食事処かわかみ」でのランチでした。

実は、7年前に明智を訪れた際にもこちらで食事をいただいており、その時に「たいへん美味しかった」という非常に素晴らしい記憶が残っていたため、今回も迷うことなくランチのために伺いました。

こちらのお店は地元の新鮮な食材をふんだんに使用していることで知られているのですが、メニューをめくってみると、いわゆる「いかにも観光地向け」といった派手なメニューはそれほど多くありません。その代わり、地元の方々の日々の生活に根差した、実直で魅力的な定食メニューが並んでいます。「お食事処かわかみ」が、元々は観光客のためだけではなく、地域に暮らす地元の方々に深く愛され続けてきた名店であるという背景を知れば、そのラインナップにも深く納得がいきます。

今回は、ボリューム満点でジューシーな「唐揚げ定食」をいただくことにしました。丁寧に揚げられた唐揚げは、噛むたびに旨味が広がり、前回の記憶に違わぬ素晴らしい美味しさでした。大満足のランチとなったことは言うまでもありません。

ただ、美味しく食事をいただきながら、ふと明智の町全体のことに思いを馳せました。

前回来訪したときは、明智駅の周辺には個人経営の味わい深い飲食店や小さなお店がちらほらと元気に営業していた記憶があります。しかし、その後に世界中を襲ったコロナ禍という大きな荒波を経て、その多くのお店が営業を止めてしまったり、シャッターを閉ざしたままになっていたりする現状を目の当たりにしました。個人店が減少してしまった寂しさは、日本の多くのローカルな観光地が抱える課題でもあります。

だからこそ、この大正村浪漫亭の2階にある「お食事処かわかみ」のような中心的な存在のレストランに、少しだけ贅沢な願望を抱いてしまったりもします。地元の方に愛される定番メニューが素晴らしいのは大前提として、せっかく遠方から大正浪漫の雰囲気を求めてやってくる観光客のために、この土地ならではの「観光地らしいスペシャルなメニュー」が用意されていたら、さらに嬉しいのではないか、と感じたのです。

たとえば、東濃地方の伝統的な郷土料理である「朴葉寿司」に、先週その美味しさに感動した山岡特産の「寒天」、そしてこの地域の名産である「菊ごぼう」を美しく盛り込んだ特別御膳のようなメニュー。そして食後のデザートには、恵那が誇る秋の味覚の象徴である「栗きんとん」がちょこんと添えられている――。

そんな、恵那・明智のオールスターのような観光メニューが一つでもあれば、旅の記念として多くの人が注文するでしょうし、地域の食文化を一度に体験できる素晴らしい取り組みになるのではないか、などと妄想が膨らんでしまいました。それほどまでに、この地域の食材には高いポテンシャルがあると感じています。


私のTOP3スポット、明智川沿いの美しい遊歩道

お腹も十分に満たされたところで、いよいよ本格的な町歩きへと出発します。大正村浪漫亭の建物を抜け、その裏手へと回ってみることにしました。

大正時代にそのままタイムスリップしたかのような、素晴らしいレトロ建築や景観が今なお数多く残されている明智町。どこを歩いても絵になる素敵なスポットばかりですが、その無数にある見どころの中でも、個人的に「TOP3」に確実に入ると断言できるほど大好きな場所が、この大正村浪漫亭の裏手を静かに流れている「明智川沿いの遊歩道」です。

明智川は、人々の暮らしが息づく民家と民家の間を、遮るものなく静かにさらさらと流れる美しい川です。その川に沿うようにして、南北にわたって非常に綺麗に整備された遊歩道が伸びています。

遊歩道に一歩足を踏み入れ、少し歩みを進めるだけで、周囲の雑音は消え去り、耳に届くのは川の心地よいせせらぎの音だけになります。ふと視線を遠くへ向ければ、東濃の穏やかな山並みが背景として美しくそびえ立っており、都会の喧騒の中では絶対に味わうことのできない、穏やかで解放感に満ちた気分に浸ることができます。歩いているだけで、自分の呼吸のペースが自然と整い、本当に大正時代や昭和の初期へとタイムスリップしてしまったかのような静謐な心地よさを味わえる、最高の散策路です。

この美しい川沿いの道を、景色のディテールを楽しみながら200メートルほど南に向かってのんびりと進んでいくと、大きな佇まいを見せる一本の立派な桜の木が目に飛び込んできました。

これが、地域の人々に古くから愛されている「八斗蒔(はっとまき)の彼岸桜」、通称「遠山桜」と呼ばれる名木です。

今回は2月という時期的なこともあり、当然ながら花は一輪も咲いておらず、力強い枝振りが天に向かって伸びる厳かな姿を見せるのみでした。しかし、その幹の太さや枝の広がりを見るだけで、春先を迎え、満開の花を咲かせたときがいかに見事であるかは容易に想像がつきます。もし次回、春の季節にこの地を訪れる機会があれば、何が何でも絶対にチェックしたい、外せないスポットとして心に留めました。


レトロな小路「うかれ横丁」と周辺の歴史スポットを歩く

明智川沿いの遊歩道を堪能したあとは、そのすぐ近くにある細い路地へと足を踏み入れてみます。

そこには、「うかれ横丁」と名付けられた、昭和・大正期のレトロな雰囲気をそのまま現代に再現したかのような、非常に味わい深い小路があります。

かつてこの地域が織物産業や商業で大きく栄えていた時代、多くの人々が行き交い、賑わいを見せていた往時の名残を、建物の壁の質感や狭い路地の絶妙なカーブから感じ取ることができます。明智川の開放的な遊歩道とあわせて、この隠れ家のような小路も絶対にセットでチェックしておくべき、素晴らしい散策ルートです。

この明智川沿いの周辺エリアには、日本大正村の数ある有料・無料の観光施設の中でも、特に人気が高い「大正の館(日本大正村資料館内)」や「大正時代館」といった、歴史的な価値が極めて高い重要な建築物や展示施設が集中しています。

これらの中身については、非常に中身が濃く、語りたいポイントが山ほどあるため、今回の「序章」ではなく、次回以降の別のブログ記事にて、たくさんの写真やエピソードとともにじっくりと詳しく紹介していきたいと考えています。

私はさらに歩を進め、周辺にある魅力的なスポットを巡っていきました。

かつての郵便局の局舎をそのまま活用し、昔懐かしい郵便ポストや通信機器などの貴重な歴史的資料が展示されている「逓信(ていしん)資料館(旧明智郵便局)」の中を見学したり、観光客が気軽に立ち寄って一息つける温かい雰囲気の「大正村お休み処」、地元の伝統的なクラフトや地域の工芸品、特産品などに触れることができる「おんさい工房」など、歩けば歩くほど現れる、気になるところを次から次へと意欲的にめぐっていきました。

一歩路地を曲がるたびに、新しい発見と歴史の断片に出会える明智の町。気がつけば、私は大正村のさらに南部エリアへと足を進めていました。


次なる目的地、千畳敷公園へ

明智駅周辺の中心部にある大正浪漫溢れるエリアを存分に満喫した私は、ここからさらにダイナミックな景色と明智の歴史の奥深さに触れるため、新たなルートを選択することにしました。

次に向かうのは、日本大正村の南部エリアにどっしりと聳え立つ山の上。そこには、この地域の歴史において重要な意味を持つ「千畳敷公園(明知城跡)」が広がっています。町の喧騒を離れ、自然豊かな山道を登りながら、かつての武将たちが見つめたであろう風景を目指すことになります。

ここからの山登りと、山頂から見渡した明智の素晴らしい全景、そしてそこに秘められた歴史ロマンについては、次回のブログ記事にて詳しくたっぷりとお届けしたいと思います。どうぞお楽しみに!

地図

〒509-7731 岐阜県恵那市明智町456

 

Follow me!