【竹生島】神の住む島へ。約165段の「祈りの階段」を登り、日本三大弁才天を祀る宝厳寺の本堂と頂の三重塔へ(第2回) ( 滋賀県長浜市の旅 : 2026-04-25 )
Contents
竹生島(滋賀県米原市)
はじめに
前回のブログでは、長浜駅から長浜港へ向かい、琵琶湖汽船の観光船「べんてん」に揺られながら、緑豊かな神秘の島・竹生島へ上陸するまでの瑞々しいクルーズの様子をお届けしました。
【竹生島】琵琶湖に浮かぶ神の住む島へ。長浜港からの快適な船旅と歴史ロマンを巡る旅(第1回) ( 滋賀県長浜市の旅 : 2026-04-25 )
船を降り、お土産店やカフェが並ぶ港の広場を通り抜けると、いよいよここから先は拝観料を支払って立ち入る宝厳寺の神聖な境内エリアとなります。今回はその第2回目として、上陸した私たちを最初に迎える険しい石段の道のりから、日本三大弁才天の一つを祀る宝厳寺の本堂、そして境内最高所に建つ美しい三重塔や至高の宝物殿を巡った格式高い参拝の様子を、詳細にレポートしていきたいと思います。
境内の分岐点と「祈りの階段」への挑戦
拝観受付を済ませて鳥居をくぐると、目の前で参拝経路が二つに分かれていることに気づきます。
正面にそびえ立つのは、目がくらむような約165段の非常に急な石段を登って、宝厳寺の本堂へまっすぐに向かう「左回りの経路」。そして右手には、琵琶湖の湖面に近い高さを進みながら、都久夫須麻神社方面へと向かう「右回りの経路」があります。
境内入り口付近に設置されている案内図には、右回りの経路が推奨される形で記されていたのですが、この日訪れていた熱心な参拝者の姿を眺めていると、不思議なことにほぼ全員が迷わず正面の左回りの経路を選んで進んでいきます。大勢の人の流れに誘われるようにして、私も左回りの経路から参拝を始めることにいたしました。
正面に待ち構える約165段の急な階段は、見上げるだけでもその傾斜の激しさに圧倒されます。私は日頃からウォーキングなどの運動を欠かさず、脚力にはある程度の自信を持っているのですが、それでも一歩一歩を踏みしめて登るうちに、次第に息が少し荒くなっていくのを感じるほどの険しさでした。
石段の途中で一息つきながら周囲を見渡すと、やはりこの急勾配はかなり体に堪えるようで、多くの参拝者が手すりをしっかりと掴みながら慎重に足を運んでいました。正直な感想として、より年配になって足腰が不自由になってからでは、この石段を登り切るのは相当に大変な苦行になるかと思います。自分の足で力強く歩くことができる元気なうちに、この聖地を訪れることができて本当に良かったと実感しましたし、健康なうちにまた何度でも訪れたい場所だと深く心に刻まれました。
ちなみに、この天へとまっすぐに伸びるような急な石段は、古くから「祈りの階段」という美しい名で呼ばれています。古来、この島を訪れた数多の巡礼者たちが、自らの願いや仏への感謝を一歩一歩に込め、祈りを捧げながら懸命に登ったことから、その名が付けられたのだそうです。そう聞くと、ただ苦しいだけの階段ではなく、己の心と向き合うための尊い修行の道のようにも思えてくるから不思議なものです。
階段の先に待つ不動明王の強い慈悲
眼前には空へとどこまでも続いていくかのような、荘厳な「祈りの階段」。一歩ずつ自分のペースでしっかりと踏みしめながら、歴史の重みを感じる石段を一段ずつ登っていきます。
そうして約165段の急な石段をようやくのぼりきり、少し息を整えたところで、力強く安置されている「不動明王像」の姿に出会うことになります。 不動明王は、密教において人々を迷いや煩悩から救い、正しい道へ導く守護尊です。その恐ろしい形相は、強い慈悲の心をもって悪や迷いを断ち切る決意を表したもの。右手には煩悩を断ち切る剣、左手には人々を救い取るための羂索(けんさく)を持ち、背後にはすべてを焼き尽くす炎が表されています。
本堂へと向かう参拝者を見守るように立つその姿は、険しい表情ながらもどこか力強く、長い石段をのぼり終えた私を温かく励ましてくれているかのように感じられました。不動明王の気迫に心が引き締まる思いを抱きながら、すぐ先にある本堂へと足を進めます。
宝厳寺の本堂と「幸せ願いダルマ」の温もり
不動明王像に迎えられたすぐ先で、ついに宝厳寺の本堂(弁才天堂)へと到着いたしました。
格式高い宝厳寺の現在の本堂は、昭和17年(1942年)に多くの人々の尽力によって再建された建物です。堂内には、島の信仰の中心である本尊の「大弁才天」が厳かに祀られています。こちらの弁才天は、江の島、宮島と並ぶ「日本三大弁才天」の一つとして数えられており、その中でも最も古い歴史を持つため「大弁才天」と称されている由緒正しき存在です。ただし、この御本尊は大変貴重な秘仏とされており、その姿を直接拝むことができるのはなんと60年に一度だけという、極めて厳格な決まりがあります。通常はお目にかかれないという神秘性が、この場所の聖なる雰囲気をより一層高めているようです。
静かに心を落ち着かせて本堂の中へと足を踏み入れると、まず何よりも先に目を引くのが、堂内のあちらこちらに所狭しと並べられている、赤や白の鮮やかで丸い「だるま」のような愛らしい置物の数々でした。 これは「辯天(べんてん)様の幸せ願いダルマ」と呼ばれるとても有名な授与品です。この可愛らしい願いだるまは、宝厳寺の本尊である大弁才天に自らの心からの願い事を届けるための特別な奉納品なのだそうです。参拝者は小さなお札に願い事を書き、それをこのだるまの小さなお腹の中に納めて、本堂へ奉納するという仕組みになっています。
薄暗く厳かな本堂の祭壇や棚に、整然と、かつ無数に並んでいる願いだるまたち。それは、これまでにこの島を遥々訪れた数え切れないほどの参拝者たちの、切なる想いや幸福への祈りが幾重にも積み重なった証そのもののようでありました。弁天様の前で深く手を合わせ、日々の感謝を捧げたあと、この愛らしくも一途なだるますがたをじっと眺めていると、階段の疲れもすっかり吹き飛び、どこか心がぽかぽかと和らいでいくような、至福の光景がそこには広がっていました。
境内の頂へ。静寂に包まれた三重塔の佇まい
本堂での参拝を終えた後は、さらにその奥へと進み、境内の中で最も高い場所に位置する三重塔と宝物殿のある一帯へと向かうことにいたしました。
宝厳寺の境内では、本堂に到達すれば終わりというわけではなく、そこからさらに細い石段をもうひと登りする必要があります。実際に自分の足で歩いてみて初めて、「まだ上に続く道があるのだな」と気づかされる隠れた順路です。 本堂周辺の賑やかさから少し離れ、一歩一歩階段を上がっていくと、そこには驚くほど静かで落ち着いた、厳粛な空間が広がっていました。ここは島内で最も高い場所に位置しており、周囲を木々に囲まれた非常に落ち着いた一等地となっています。
ここに堂々と建つ「三重塔」は、もともと室町時代の文明年間(15世紀後半)に建立されたという古い歴史を持っていましたが、残念なことに江戸時代初期に起きた火災によって一度焼失してしまいました。現在の壮麗な塔は、お寺に残されていた貴重な古い絵図や資料をもとに、平成12年(2000年)に約350年という長い時を経てようやく現代に復元されたものです。 建物の高さ自体は約15.5メートルと、歴史的な塔の中ではそれほど巨大な部類ではありません。しかし、島内で最も標高の高い頂の場所に建っているため、下から見上げるその姿は非常に堂々としており、数字以上の圧倒的な存在感を放っています。
本堂の活気ある賑わいから一歩離れたこの最高所には、俗世の雑音が一切届かない、どこか別世界のような神聖な静けさが満ち満ちています。新緑の木々の合間から覗く、鮮やかな朱色の三重塔を見上げていると、この特別な空間が持つ厳かな空気を肌で感じることができ、島の頂に立っているのだという事実が静かに心に染み渡ってきます。
「湖国文化財の一大宝庫」宝物殿の至宝
三重塔のすぐ隣に建つ宝物殿は、昭和28年(1953年)に建てられた「湖国文化財の一大宝庫」とも呼ばれる施設です。
内部には寺に伝わる仏像や絵画、経典などが収蔵されており、国宝「法華経序品(竹生島経)」や弘法大師空海ゆかりの重要文化財など、大変貴重な寺宝を今に伝えています。時期によっては特別な展示が行われることもあり、島の深い歴史の堆積をじっくりと学ぶことができる貴重な空間となっています。
輝く湖面を望むお下りの石段と、次回の完結編へ
三重塔と宝物殿で悠久の歴史ロマンをたっぷりと堪能した後は、次なる目的地である国宝の「唐門(からもん)」へと向かうため、今度は下りの石段へと歩みを進めます。
この三重塔から唐門へと緩やかに下っていく石段からの景色が、実は今回の参拝ルートの中で、私の一番のお気に入りの隠れた絶景ポイントとなりました。 上りとは異なり、下りの視線の先には、木々の新緑の隙間から竹生島港の様子や、船が行き交う穏やかな琵琶湖の水面が美しく広がって見えます。遠くの湖面が太陽の光を浴びてキラキラと白く輝き、その中に自分たちの乗ってきた港の景色が小さく収まっている様子は、まるで一枚の完成された絵画のようにドラマチックで、いつまでも眺めていたくなるほどの情緒がありました。一歩下るごとに変化するその美しい景色をカメラに収めつつ、ゆっくりと坂を降りていきました。
さて、素晴らしい景色を眺めながら石段を降り切った先には、いよいよ豊臣秀吉ゆかりの絢爛豪華な建築美が残るエリアが待っています。 次回のブログはいよいよ竹生島旅の「完結編」となります。豊臣秀吉の伏見城からの移築遺構と伝えられる圧巻の国宝「唐門」、崖の上の斜面に迫り出すように建てられた極めて不思議な構造の重要文化財「舟廊下(ふなろうか)」、傷を負った浅井家の人々の祈念や、環境に優しい素材で作られた土器の皿に願いを乗せて投げる「かわらけ投げ」の体験ができることで大人気の「都久夫須麻神社(つくぶすまじんじゃ)」へと向かいます。
歴史と絶景がさらに濃縮された完結編も、どうぞお楽しみに。
地図:竹生島 宝厳寺
〒526-0124 滋賀県長浜市早崎町1664−1




































