永観堂 禅林寺 (3)|曲線の臥龍廊を登り多宝塔へ!山寺の立体的な景観美と京都を一望する絶景 (京都府京都市の旅 : 2026-05-07)

 

 

永観堂 禅林寺(京都府京都市)

永観堂の堂内巡りを終える頃、境内の雰囲気は再び大きく変化します。平地に静かに広がる寺院から、山裾の傾斜に沿った山寺へ。そんな力強い印象を受ける高台エリアへと足を踏み入れていきます。

永観堂 禅林寺 (2)|堂内を巡る「みかえり阿弥陀」と青もみじ映える木造回廊 (京都府京都市の旅 : 2026-05-07)

圧巻の木造曲線美:「臥龍廊」を経て静寂の開山堂へ

特に息をのむほど印象的だったのが、開山堂へと向かって伸びる外廊下でした。

山の傾斜に沿って巧みに組まれた曲線の回廊は「臥龍廊(がりゅうろう)」と呼ばれ、まるで龍が体をうねらせて山を登っていくかのような造りになっています。木製の螺旋階段のように緩やかなカーブを描くその構造は、一目見ただけで思わず感嘆の声が漏れるほどの圧巻の造形美です。

長い年月を経て深みを増した木材の風合い、外の清々しい空気を感じながら歩く爽快感。新緑の青もみじに包まれた曲線の回廊を歩いていると、まるで時代を幾重にも遡っていくかのような不思議な感覚を覚えます。

その回廊を登り切った先に静かに現れるのが「開山堂(かいさんどう)」です。

開山堂は、永観堂(禅林寺)の開祖である真紹僧都(しんじょうそうず)を祀るお堂です。現在の建物は江戸時代に再建されたもので、永観堂の信仰と歴史を中心で支え続けてきた大切な存在です。堂内には開祖像が安置されており、長い歴史の移り変わりを静かに見守ってきました。

周囲は深い緑と静寂に包まれており、華やかな阿弥陀堂とはまた一味異なる、凛とした落ち着いた雰囲気が漂っています。静かな空気の中でそっと手を合わせると、この寺院が千数百年の長きにわたって多くの人々の信仰を集め続けてきた理由が、すっと胸に落ちていくような気がしました。

再び高台を目指して:神仏習合の歴史を伝える鎮守社へ

開山堂からの景色も大変素晴らしかったのですが、ここからさらに目指すのは山腹に佇む「多宝塔」です。

しかし、堂内からは多宝塔へ直接渡ることができません。すぐ目の前、目と鼻の先まで来ているにもかかわらず、一度外階段を下りて大玄関へと戻り、今度は外通路を通り、高台に登る必要があります。御影堂の脇にある山道へと回り込み、石段を登りながら再び高台を目指すことになります。

石段を少し登ると、先ほど開山堂付近から見えていた「鎮守社(ちんじゅしゃ)」に到着しました。

鎮守社は、寺院を守護する神々を祀る社です。永観堂の鎮守社には古くから寺の安全や繁繁を見守る神が祀られており、日本の伝統的な神仏習合の歴史を今に伝えています。明治時代の神仏分離以前、日本では寺と神社が密接な関係を持つことが一般的でした。永観堂の鎮守社もその面影を残す貴重な建築です。開山堂の近くにひっそりと佇み、素朴で味わい深い趣を醸し出していました。

天空の多宝塔へ:山腹から見下ろす立体的な景観美と京都の街並み

鎮守社に手を合わせたあと、いよいよ多宝塔への参道を登っていきます。放生池のほとりから見上げていた、あの美しい塔の姿を目指して石段を一つひとつ登り続けると、やがて高台に立つ多宝塔へと到着しました。

永観堂の多宝塔は、真言密教や天台宗などで重視される仏塔形式の一つです。多宝如来を祀るための塔で、法華経に登場する多宝如来への信仰に由来しています。もともと室町時代にも存在していましたが応仁の乱などの戦乱によって焼失し、現在の多宝塔は1928年(昭和3年)に再建されたものです。山腹の高台に建てられているのは、仏塔を境内の象徴として際立たせるためであり、阿弥陀堂や御影堂とともに永観堂の景観を美しく形づくる重要な建造物となっています。

多宝塔の周囲に立つと、そこからは素晴らしい眺望が広がっていました。5月の瑞々しい新緑が豊かに生い茂っているため、足元の永観堂の建物や放生池はわずかに覗く程度ですが、視線の先には京都の街並みが一望できる大パノラマが広がっています。

さきほどは放生池のほとりから多宝塔を見上げていましたが、今度はその多宝塔から境内と街並みを見下ろしています。視点が変わることで、永観堂がいかに立体的な構造を持った寺院であるかが鮮明に理解できます。

東山の山裾という傾斜地を巧みに利用しながら、庭園、堂宇、回廊、多宝塔が完璧な配置で組み上げられているのです。この緻密な構成の素晴らしさは、実際に自分の足で歩き、視点を変えてみないと実感できません。永観堂は「秋はもみじ」の名所として知られていますが、その真の本質は、自然の地形を計算し尽くした景観設計の巧みさにあるのではないでしょうか。

旅の終わりに:新緑の永観堂が教えてくれた巡り歩く喜び

池のほとりから見上げる庭園美。 堂内から眺める新緑の静寂。 渡り廊下や臥龍廊から感じる建築美。 そして多宝塔から見下ろす立体的な景色。

歩みを進めるたびに視界がダイナミックに変化し、次々と新しい絶景が現れる永観堂。直前に訪れた南禅寺の雄大さも格別でしたが、永観堂の繊細で立体的な回遊性も負けず劣らず素晴らしく、人によっては「こちらの方がより深く心に残った」と感じるほどの圧倒的な魅力がありました。

5月の青もみじと鮮やかな春紅葉に包まれた永観堂。秋の紅葉期とはまた異なる清々しい表情を見せてくれたこの古刹は、今回の京都旅行の中でも特に忘れがたい宝物のような場所となりました。

地域の豊かな歴史や文化、そしてそこに込められた昔の人々の想いに触れることのできた、深く満ち足りたひとときでした。


南禅寺

  • 所在地:〒606-8445 京都府京都市左京区永観堂町48

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