名古屋市博物館:リニューアル工事中のプレオープンで巡る豊臣秀吉とリトアニアの歴史展(名古屋市瑞穂区の旅:2026-09-06)

 

名古屋市博物館(名古屋市瑞穂区)

長らく訪れたいと思いながらも、気づいた時には改修工事による休館に入ってしまっていた名古屋市博物館。オープンを今か今かと心待ちにしていたところ、リニューアル工事の合間を縫って、9月5日から期間限定でプレオープンするという知らせが届きました。

当初はかなりの混雑を予想し、アジア大会が終わった10月あたりに足を運ぼうかと考えていました。しかし、プレオープン初日の状況を確かめてみるとさほど大きな混雑もなかった様子。そこで予定を前倒しし、9月6日に早速現地を訪れてみることにしました。

まるで公園のような開放感!緑豊かな屋外広場

地下鉄:桜山駅から歩いてアクセスすると、まず目に飛び込んでくるのは名古屋市博物館の前に広がる開放的な広場です。この日は広場周辺で各種イベントも開催されており、家族連れや地域の人々でにぎわっていました。

古いスマホ写真のため、画質悪いですが悪しからず。

驚かされたのは、その整備された素晴らしい空間です。中央には青々とした芝生広場が広がり、その周辺には誰もが自由にくつろげるベンチや、日差しや雨を遮る屋根付きスペースなどが完備されています。単なる博物館の前庭という枠を超えて、まるで居心地の良い公園のように誰もがゆっくりと滞在を楽しめる環境が整っていました。イベントの活気を感じながら広場を散策するだけでも、十分に訪れる価値を感じさせてくれます。

広場で過ごす人々の声を聞きながら一巡したあと、いよいよ目的である館内へと足を進めることにしました。

リニューアル途中の館内とプレオープンならではの雰囲気

広場には大勢の人が集まっていましたが、館内への入館手続きは非常にスムーズで、恐れていたような大混雑に巻き込まれることもありませんでした。展示室内部も程よい人出で、自分のペースで落ち着いて作品や資料と向き合うことができる絶好の観覧環境でした。

現在の名古屋市博物館は全館がオープンしているわけではなく、大規模なリニューアル工事の最中です。そのため、今回のプレオープンで見学できるのは1階のエリアのみとなっています。11月2日からは再び工事のための休館に入り、待望のグランドオープンは2028年4月15日を予定しているとのこと。まさに今回のプレオープンは、生まれ変わりつつある博物館の「今しか見られない姿」に触れる貴重な機会と言えます。

館内に入ると、右側に有料展示エリア、左側に無料展示エリアと分かれています。まずは右側の有料展示エリアへと向かい、開催されている2つの特別展をじっくりと鑑賞することにしました。

豊臣秀吉と尾張の深掘り!知られざる統治の歴史

有料展示エリアで最初に足を踏み入れたのは、特別展「名古屋には秀吉がおるでよ! ―秀吉と尾張の歴史―」です。

こちらの展覧会は、名古屋や尾張の地と豊臣秀吉との深い結びつきをテーマにした展示構成となっています。現在、NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」が話題を集めて盛り上がっていることもあり、秀吉の視点やゆかりの地にスポットを当てた内容が充実していました。館内では博物館パフォーマーの方々によるイベントも実施されており、歴史ファンをはじめ多くの来館者でにぎやかな雰囲気をみせていました。

一般的な歴史展示では、豊臣秀吉が農民から身を起こし天下人へと上り詰めていく成功ストーリーが多く語られがちです。しかし、今回の展示で特に興味深かったのは、小牧長久手の戦い以降の文書や資料に光が当てられていた点でした。

小牧長久手の戦いを経た後、秀吉は尾張の地を織田信雄に任せ、国内の道路整備などを指示しました。その事実を裏付ける古文書「織田信雄半物」からは、当時のインフラ整備のリアリティが伝わってきます。さらに小田原の戦いを経て天下統一を果たした後は、甥である豊臣秀次を関白に任命して尾張を託しました。秀次が尾張国内に発した命令書である「豊臣秀次朱印状」などの公式文書からは、権力がどのように移行し行使されたかが克明に読み取れます。

そして秀次が失脚した後は、福島正則が尾張の統治を担うことになります。このように、通史では深く語られることの少ない「秀吉以降の尾張の統治者たち」に焦点を絞った展示展開は実に見事で、歴史の裏側に隠された地域史の動向をじっくりと堪能することができました。

バルトの森の歌声と伝統文化!特別展「リトアニア」

続いて見学したのは、もう一つの特別展である「リトアニア ―バルトの森に響く歌―」です。こちらはバルト海沿岸に位置する国、リトアニアの歴史や文化、人々の日常の暮らしを多角的に紹介する展覧会となっています。

そもそもなぜ名古屋でリトアニアの展覧会が開催されているのかといえば、両者を結ぶ極めて重要な人物の存在があります。それが、外交官である杉原千畝です。第二次世界大戦中、リトアニアの難民に「命のビザ」を発給して多くの人々を救った杉原千畝の功績を縁として、名古屋市博物館とリトアニア国立博物館は友好館協定を結んでいるのです。

しかし、この展覧会は単に「杉原千畝と命のビザ」の功績だけを称える内容にとどまりません。むしろ、杉原千畝という偉大な存在を入口としながら、リトアニアという国家の豊かな文化や歴史そのものを知ってもらうという素晴らしい構成になっていました。

展示の冒頭で目を見張せられたのは、4年に一度開催されるという「歌と踊りの祭典」の紹介映像と写真です。国中から無数の合唱団や踊り手が集まり、広大な会場で響かせる大スケールの歌声と踊りは圧巻の一言で、この国の文化的な深みを強烈に印象づけます。

展示物の中で特に関心を惹かれたのが、色鮮やかな民族衣装の数々です。北欧の国々に見られるような鮮烈で明るい色彩とは異なり、落ち着いた暗めのトーンや、日本でいえば冬服に見られるような味わい深い色彩を組み合わせて仕立てられています。その独特のシックな色合いは、私たち日本人にとってもどこか親しみやすく、非常に魅力的に映りました。衣服にあしらわれたエンブレムや、帯やスカートに施された繊細な柄の幾何学的な美しさも印象深く、時間を忘れて見入ってしまいました。

リトアニアの祭りや行事では、常に「歌」「楽器」「踊り」「民族衣装」がひとつに結びついています。遠く離れた異国の地であり、見た目や表現の形は違っていても、伝統や自然を尊び祭りを通じて人々が集うという根本的な精神には、どこか日本の伝統行事や祭りとも通底するものがあるように感じられます。

一方、後半の展示エリアは「自由のための戦い」というテーマのもと、ロシアやソ連、そしてナチス・ドイツといった大国からの占領に翻弄され続けてきたリトアニアの厳しく苦難に満ちた歴史が綴られていました。幾多の困難を乗り越えて独自の文化を守り抜いてきた人々の強い意志が、展示資料の端々から伝わってきます。

さらに終盤では、杉原千畝の「命のビザ」に関する記録はもちろんのこと、現代のリトアニアが誇るバスケットボールの強さや、レーザー技術をはじめとする最先端の産業技術、文化を次の世代へと伝承していくための様々な取り組み、そして日本との現代における親密な交流などが紹介されていました。特にレーザー技術などの高度な先端産業が非常に発達している国であるという事実は個人的に意外であり、大きな発見となりました。

無料エリアの体験コーナーと魅力的な限定グッズ

有料展示エリアを出た後は、1階左側に位置する無料展示エリアへと足を延ばしました。こちらには杉原千畝の生涯やビザ発給に関する展示とともに、当時の状況を学べる体験コーナーなどが設置されており、多くの人が熱心に解説パネルに見入っていました。無料エリアでありながら学びの要素が凝縮されており、有料展覧会と合わせて見学することで、より理解を深めることができます。

観覧の最後に立ち寄ったショップコーナーも、見逃せないスポットでした。売店には豊臣秀吉をはじめとする戦国時代に関連した和風のグッズや書籍がズラリと並んでいるだけでなく、リトアニアから直輸入されたかのような伝統工芸品や関連書籍、可愛らしい小物類も豊富に取り揃えられていました。二つのまったく異なる文化が同じショップ内に共存している様子は独特で、見て回るだけでも大いに楽しむことができました。

おわりに:グランドオープンへの期待を胸に

念願だった名古屋市博物館への初訪問は、歴史の奥深さに触れる特別展と、異国の魅力が詰まったリトアニア展の双方を堪能できる最高の一日となりました。

11月からは再び長い休館期間に入り、本格的な工事が進められていきます。完全な姿でお披露目される2028年4月15日のグランドオープンを迎えたとき、この博物館がどのような新しい展示や空間で私たちを迎えてくれるのか、今から楽しみでなりません。生まれ変わった姿で再会できる日を、心から待ち望みたいと思います。

地図

〒467-0806 愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂通1丁目27−1

 

 

 

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