日本モンキーセンター探訪記【後編】〜南側エリアに広がる、人間味あふれるサルの世界〜(愛知県犬山市の旅 : 2026-05-02)
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日本モンキーセンター(愛知県犬山市)
旅行日:2026年5月2日(土)
前編では、犬山駅から新緑を楽しみながら徒歩で向かった道のりや、昭和のノスタルジックな風情が残る北側エリアの様子をお届けしました。
日本モンキーセンター探訪記【前編】〜歴史ある霊長類の楽園へ!休園を前に訪ねた記録〜(愛知県犬山市の旅 : 2026-05-02)
世界最多クラスの霊長類の飼育展示種数を誇る「日本モンキーセンター」の旅は、ここからがいよいよ本番です。施設の大規模リニューアルに伴い、2026年10月19日(月)から当面の間、全園休園になってしまう前にその魅力を余すことなく目に焼き付けるべく、後半は多様な屋内展示やユニークな生態展示が目白押しの「南側エリア」へと足を進めました。
南側エリアにも非常に多くの見どころが存在していますが、今回はその中から、私が特に心を行動を動かされ、深く印象に残った3つの個性豊かなエリアを中心に、じっくりとご紹介していきたいと思います。
■ 不思議な五感の体験と愛らしい命が待つ「南米館の室内施設」
まず足を運んだのは、中南米の熱帯雨林などに生息するサルたちを集めた「南米館」です。この施設は屋外展示と室内展示に分かれており、それぞれに異なる魅力が詰まっていました。
屋外のエリアでは、ジェフロイクモザルなどの姿を観察することができます。彼らが自慢の長い尻尾をまるで人間の手足かのように器用に使いこなし、軽々と木々の間を移動していくダイナミックな姿は非常に印象的でした。
それに対して、一歩足を踏み入れた室内施設では、全く異なる繊細な世界が広がっていました。こちらで展示されているのは、中南米に暮らす体のごく小さなマーモセットやタマリンの仲間たちです。クロミミマーモセットやコモンマーモセットといった、本当に人間の手のひらにすっぽりと収まってしまうのではないかと思うほど小さなお猿さんたちが、目の前を行き来しています。
驚いたのは彼らの「声」でした。ケージの中から聞こえてくるのは、サルというよりも、まるで小鳥のさえずりのような高くて美しい音色の鳴き声だったのです。その健気に鳴く姿はかわいらしくもあり、たまらない愛らしさに満ちていました。彼らは一体、どんな会話を交わしているのでしょうか。「こっちに美味しい餌があるよ」と話しているのか、あるいは縄張りを主張して互いを威嚇し合っているのか、それとも飼育員さんに餌をせがんでいるのか。もしできることなら、その会話の内容が楽しいものであることを願わずにはいられません。昨今は人工知能の技術が目覚ましい進化を遂げていますが、いつか動物たちの鳴き声や感情を高い精度で翻訳してくれるような機械が誕生してくれたら面白いのに、などと夢想してしまいました。
さらに室内を進むと、夜行性のサルであるヨザルに出会いました。暗がりのなかで二匹がぴったりと体を寄せ合い、くりくりとした大きな瞳でこちらを静かに見つめ返してくる姿があまりにも愛おしく、思わず小さな歓声を上げて足が止まってしまうほどでした。
なお、この南米館の室内施設は、サルたちが仲間同士のコミュニケーションや縄張りの主張のために行う「においつけ」の習性によって、独特の濃厚なにおいが立ちこめています。こればかりは人によって好き嫌いがはっきりと分かれるポイントかもしれませんが、他の一般的な動物園の展示では決して味わうことのできない、五感を刺激される不思議な世界観がそこにはありました。日本モンキーセンターを訪れた際には、ぜひとも肌で体験してほしいおすすめの空間です。
■ 霊長類のつながりを再確認する「アフリカ館のバーバリーマカクの表情」
続いて向かったのは、広大なアフリカ大陸に生きるサルたちを展示する「アフリカ館」です。ここで私の心を最も強く捉えて離さなかったのが、「バーバリーマカク」という種類のサルでした。
展示エリアの片隅で、ただ静かに、じっと外の景色を見つめている一頭のバーバリーマカクがいました。その横顔や瞳の奥には、どこか切なさと深い哀愁のようなものが漂っており、私は吸い寄せられるようにその場に立ち止まり、長い間見入ってしまいました。
その佇まいをじっと眺めているうちに、私はまるで動物を見ているのではなく、人生の苦楽や様々な物思いにふけっている「ひとりの人間」を鏡越しに見ているかのような、不思議な錯覚に陥りました。もちろん、彼らの脳裏にどんな思考が巡り、その表情が本当は何を語っているのかは、私たち人間には分かり得ません。それでも、そこから感じ取れる喜びや悲しみ、あるいは静かな好奇心といったものは、私たち人間が持つ感情とどこか深く通じるものがあるように思えてなりませんでした。
喜怒哀楽を映し出すその豊かな表情を見つめていると、彼らもまた、私たちと同じ霊長類という大きな家系に連なる血の通った仲間なのだというつながりを、改めて深く考えさせられました。ただ生態を観察するだけでなく、哲学的な思索に耽るような、とても濃密で贅沢なひとときを過ごすことができました。
■ 檻のない世界で至近距離の遭遇「Waoランド」
南側エリアのハイライトとも言えるのが、ワオキツネザルたちが暮らす「Waoランド(ワオランド)」です。ここは、人間側がフェンスで囲まれた島のようなエリアの内部へと直接立ち入り、檻や柵が一切ない地続きの空間で、ワオキツネザルたちを間近に観察することができる画期的な生態展示エリアになっています。
前編でご紹介した「リスザルの島」も放し飼い形式でしたが、リスザルは体が非常に小さいため、近くにいても恐怖心や抵抗感はほとんどありません。しかし、こちらのワオキツネザルは成猫並みのしっかりとした体格と大きさがあります。そのため、最初は「こんなに大きなサルがすぐ近くにいて、人間に飛びかかったり危害を加えたりしないだろうか」と、少しばかり緊張してドキドキしてしまいました。
ところが、いざ島の中に足を踏み入れてみると、そんな人間の心配は完全に杞憂に終わりました。ワオキツネザルたちは、すぐ目の前を人間が通りかかろうが、すぐ近くで視線を送ろうが、文字通り「どこ吹く風」といった様子なのです。私たちの存在を全く気にする素振りも見せず、それぞれが思い思いの方向へあちこち自由に歩き回り、のんびりと日向ぼっこをしたり木に登ったりしていました。
これほど野生に近い距離感で、動物たちの日常の境界線に自分自身が溶け込める経験は、なかなか味わえるものではありません。サルの体温や息遣いまでもが伝わってくるかのような臨場感に、大満足の時間を過ごすことができました。ちなみに、いくら至近距離まで近づいてくるとはいえ、動物たちに直接触れることは厳格に禁止されていますので、これから訪れる方はくれぐれもご注意ください。
■ 伝統的な施設への敬意と、未来への期待
他にも、南側エリアにある「アフリカセンター」を訪れ、私たちがよく知るお馴染みのゴリラやチンパンジーたちも見学しました。ただ、こちらは築年数を経た古い施設ということもあり、頑丈で分厚い鉄格子の檻や、歳月の長さを物語る老朽化したガラス越しでの見学となったため、彼らの姿を奥までじっくりと視認することは少し難しい環境にありました。
しかし、これもまた開園から60年以上にわたって日本の霊長類研究と展示を支え続けてきた歴史の重みそのものです。今回は少し遠くから眺める形となりましたが、2026年10月からの大規模リニューアルを経て、動物福祉にも配慮した素晴らしい最新の施設へと新しく生まれ変わった際には、彼らの生き生きとした姿をぜひ最前線でじっくりと拝見したいと思います。
■ はじめての日本モンキーセンターを終えて
こうして全園を巡り終え、初めて訪れた日本モンキーセンターでの一日は、本当に大満足の素晴らしい時間となりました。
一般的な動物園を訪れる際は、私たちはあくまで「動物という異種を観賞しに行く」という感覚になりがちです。しかし、この日本モンキーセンターという場所においては、多種多様なサルたちの高度な社会性や豊かな表情、人間そっくりの仕草に触れるうちに、不思議と「人間に会いに行く」あるいは「親戚の集まりに顔を出す」といった、独特の親しみ深い感覚を抱くことになりました。これこそが、霊長類専門の博物館たるゆえんなのかもしれません。
10月に予定されている長期休園の前に、ぜひもう一度この場所を再訪したいと考えています。あの物思いにふけるようなバーバリーマカクの深い表情や、園内中に美しく響き渡るフクロテナガザルたちの澄んだ歌声に、再び会いに行くのが今から楽しみでなりません。
さて、充実した日本モンキーセンターの散策を終えた私は、心地よい疲労感を覚えながら、再びここから徒歩での移動を開始しました。目指すのは、私にとって本当に久しぶりの訪問となる「とある場所」です。犬山の地で次に出会った素敵な風景と旅の記録については、また次回の新しいブログ記事にて詳しく綴っていきたいと思います。
どうぞお楽しみに。
地図:日本モンキーセンター
データ
所在地:〒484-0081 愛知県犬山市犬山官林26


























