【長谷寺】国宝の本堂へ!大迫力の十一面観世音菩薩と舞台からの絶景、千年の時を越える「時の貝」(その3)(奈良県桜井市の旅:2026-07-27)
長谷寺(奈良県桜井市)
マイブーム中の奈良を巡る旅。人生で初めて訪れた長谷寺の参拝記、今回は第3回目をお届けします。
前回は、仁王門から長谷寺の象徴である399段の登廊(のぼりろう)を一段ずつ進み、整然と並ぶ長谷型灯籠や天狗杉、蔵王堂を巡りながら静かな参道歩きを満喫しました。 今回は、登廊を上りきった先に待つ国宝の本堂へのお参り、そこから見渡す見事な絶景、そしてまさかのタイミングで出会うことができた奇跡の時報「時の貝」の様子を詳しくご紹介していきます。
399段の先へ!国宝「本堂」との感動の対面
399段ある登廊を一段ずつ一歩一歩上っていくと、やがて石段の先に息をのむほど大きな木造建築が見えてきました。 こちらが長谷寺の「本堂」です。
初瀬山の険しい斜面に建つ本堂は、山の斜面から豪快にせり出すような「懸造(かけづくり)」という伝統的な建築様式となっており、正面には京都の清水寺を思わせるような大きな舞台が設けられています。 現在の本堂は江戸時代の慶安3年(1650年)に徳川家光の寄進によって再建されたもので、その歴史的・建築的価値の高さから2004年には国宝にも指定されています。
仁王門から399段の石段を上ってきた足の感覚を思うと、「ついに本堂にたどり着いたのだ」という深い感慨が胸にこみ上げてきます。
大迫力の「長谷寺式十一面観世音菩薩立像」を拝観
本堂へ足を踏み入れ、まず向かったのが内陣です。 こちらに鎮座し、参拝者を優しく温かく迎えてくださるのが、長谷寺のご本尊である「十一面観世音菩薩立像」です。
高さ10.18メートルにも達する巨大な観音様で、右手に錫杖(しゃくじょう)、左手に水瓶を持つ独特の姿から「長谷寺式十一面観音」と呼ばれています。一般的な観音様とは異なり、地蔵菩薩のように右手に錫杖を持たれているのが大きな特徴で、人々の救済のために一歩を踏み出すお姿を表していると言われています。
実際に目の前に立ち、見上げるように拝観すると、その圧倒的な大きさと厳かな佇まいに言葉を失います。圧倒的なスケール感でありながら、包み込むような優しさが感じられ、自然と手が合わさりました。
ただし、ご本尊の十一面観世音菩薩立像は撮影禁止となっています。 写真として形に残すことはできませんでしたが、その分、レンズを通すことなく、目の前に立つ巨大な観音様のお姿を一つひとつ心に刻み込むように、時間をかけてじっくりと拝観させていただきました。
本堂内に残る武者絵と歴史の足跡
本堂の中には、ご本尊のほかにも長谷寺の長い歴史を感じさせる様々な絵画や寺宝が展示されていました。
なかには、武士たちが激しく戦っているような場面を描いた重厚な武者絵などもあり、一つひとつ眺めていると実に興味深い発見があります。 仏像や建物そのものの美しさだけでなく、かつて多くの武将や文人、庶民たちが祈りを捧げてきた歴史の足跡を感じることができ、長谷寺という古刹が歩んできた深い歴史の重みに思いをはせる素晴らしい時間となりました。
本堂の舞台から望む初瀬の町並みと連なる山々
そして、今回の本堂参拝で特に楽しみにしていたのが、正面に広がる大きな舞台からの眺めです。
舞台へと一歩踏み出すと、それまで登廊の屋根や周りの豊かな木々に囲まれていた視界が一気に開けます! 眼下には初瀬の趣ある町並みが広がり、その向こうには青々とした山々が幾重にも連なっています。すぐ近くの山肌だけでなく、遙か遠くの山並みまでクリアに見渡すことができ、その広々とした爽快な大パノラマには思わず深く感動してしまいました。
399段の登廊を上ってきたときの足の疲れも、この舞台の上で心地よい風を受けながら景色を眺めていると、すーっと吹き飛んでいってしまうから不思議です。
一方で、今回の参拝時には五重塔が工事期間中であったため、舞台からその優美な姿を見ることができなかったのは少し残念でした。 長谷寺を代表する名風景の一つでもある五重塔を楽しみにしていただけに心残りではありますが、「また五重塔が美しく蘇った頃に再訪しよう」という新しい楽しみができました。 それでも、本堂の舞台から遠くまで広がる山々を眺められたことで、深く心に残る最高のひとときとなりました。
千年の時を越えて響く「時の貝」との感動的な出会い
本堂での参拝を終え、舞台からの絶景を胸に刻んで次の目的地へ向かおうと本堂をあとにしようとした、まさにそのときのことです。
時刻はちょうど昼の12時。 ふと見ると、鐘撞堂の方へ向かって修行僧らしい三人の姿が進んでいくのが見えました。 「これから何が始まるのだろう?」と気になり、足を止めてじっと見守っていると、正午を知らせる大きな鐘の音とともに、澄んだ法螺貝(ほらがい)の音が山内に力強く響き始めました。
実は長谷寺には、「時の貝」と呼ばれる法螺貝による伝統的な時報の習慣があります。 法螺貝は古くから山岳信仰や修行などで用いられてきた音響器具で、長谷寺では古代より現在に至るまで、人々に時間を知らせるために吹き鳴らされてきました。現在でも毎日、正午には鐘の音と法螺貝で昼の訪れを告げ、夜8時には一日の終わりを告げる法螺貝が吹かれています。
しかも、この正午の「時の貝」は、なんと平安時代の古典文学である清少納言の『枕草子』にも登場するのです。 『枕草子』の中では、清少納言が長谷寺に長谷詣(初瀬詣)に訪れた際、突然近くで大音量で吹き鳴らされた法螺貝の音に驚いた様子が臨場感たっぷりに記されています。 千年以上の長い時を経た現在も、当時とまったく変わらない同じ長谷の山々に法螺貝の音が響き渡っているのだと思うと、自分が平安時代にタイムスリップしたかのような、なんとも不思議で深い感動が込み上げてきました。
まさか本堂をあとにしようとした最高のタイミングで、この歴史ある「時の貝」を実際に自分の目と耳で体験できるとは思ってもいませんでした。 深くお腹に響く鐘の音に続いて、初瀬の山あいに爽快に響き渡る法螺貝の余韻。 長谷寺の長い歴史と伝統を、目で見るだけでなく、耳と身体全体で感じることができた貴重な瞬間でした。 偶然その場に居合わせたからこそ味わえた、忘れられない旅の奇跡です。
道のりすべてが特別な参拝体験
仁王門から始まり、下廊沿いに並ぶ鉢植えの蓮の葉、迫力ある天狗杉、そして蔵王堂での蔵王三鈷との出会いなどを楽しみながら歩いてきた登廊。 その399段の道のりを上りきった先で国宝の本堂にお参りし、大迫力の観音様と出会い、開放的な舞台から初瀬の山々を眺め、最後には清少納言も聴いた「時の貝」の音色に出会うことができました。
長谷寺で過ごす時間は、こうした素晴らしい景色や歴史的な建造物はもちろんのこと、偶然出会えた出来事も含めて、どこを切り取っても心に深く残る素晴らしい参拝となりました。
次回のブログはいよいよ長谷寺めぐりのラスト(第4回)です。 奥の院にある豊臣秀長公の供養塔や、歴史ある本坊など、境内のその他の魅力を余すところなくお届けしたいと思います。ぜひ次回もお楽しみに!
所在地
〒633-0112 奈良県桜井市初瀬731−1 長谷寺本堂
































