金地院:新緑輝く「鶴亀の庭」と特別拝観、京都唯一の東照宮に感銘を受けた日 (京都府京都市の旅 : 2026-05-07)

 

 

金地院(京都府京都市)

2026年5月6日で大型連休のゴールデンウィークが終わり、その翌日である5月7日。観光客の混雑も少し落ち着くのではないかという期待を胸に、いざ京都へと向かいました。

今回の目的地は、青々とした新緑が美しく映える南禅寺周辺エリアです。

旅の始まりは京都駅から。地下鉄烏丸線に乗り込み、烏丸御池駅で地下鉄東西線へと乗り換えて蹴上(けあげ)駅に到着しました。今回の旅ブログでは、南禅寺の塔頭である「金地院(こんちいん)」を中心に、その魅力あふれる境内や特別拝観の体験をたっぷりと紹介したいと思います。

遠回りが教えてくれた京都の歴史と産業遺産

蹴上駅を出て、市道182号線沿いを北西へ進みます。歩を進めるとすぐに、京都らしさを感じる歴史あるトンネルが姿を現しました。

明治時代に造られた非常に珍しいレンガ造りのトンネル「ねじりまんぽ」です。

このトンネルは、琵琶湖疏水のインクライン(船を台車に載せて運んだ傾斜鉄道)の下を通る歩行者用の通路です。「まんぽ」とは、かつて関西地方で使われていたトンネルの呼び名だそう。「ねじり」という名は、上部の重みに耐えられるよう、天井のレンガが斜めにらせん状へ積まれている独特の構造に由来しています。

このトンネルをくぐれば南禅寺へすぐ向かえるのですが、土地勘のなかった私はそのまま市道182号線沿いを直進し、少し遠回りをして進むことになりました。

しかし、その遠回りのおかげで、蹴上インクラインで実際に使われていた台車(復元展示)や、当時の仕組みを解説する展示をゆっくり見学することができました。

インクラインとは、船を台車に載せてレールの上を移動させる傾斜鉄道のことで、琵琶湖疏水の舟運を支えた重要施設です。蹴上と南禅寺の間にある約36mもの高低差を克服するために採用され、全長は約582mと、当時としては世界最長級を誇っていたそうです。思いがけず京都の現代化の歴史に触れられた、素敵な寄り道となりました。

金地院との出会いと「鶴亀の庭」の洗練された美しさ

やがて南禅寺前交差点の5車線道路にたどり着き、東へ伸びる1本道を進んでいきます。新緑の木々と趣のある高級店が立ち並ぶ道沿いを歩き、南禅寺の中門が正面に見えてきたところで、右手に「東照宮下乗門」と書かれた大きな看板と金地院が現れました。

金地院は、南禅寺の塔頭(子院)のひとつで、慶長10年(1605年)に以心崇伝(いしんすうでん)によって再興された寺院です。以心崇伝は単なる僧侶にとどまらず、徳川家康や徳川秀忠の政治・外交・法制度に深く関わった人物であったため、徳川家と極めて強い結びつきを持っています。

門の前には「特別拝観」実施中の案内が。吸い寄せられるように、まずはこの金地院から参拝することにしました。

大門、そして明智門を抜けて右手へ進むと、方丈の前に素晴らしい枯山水庭園「鶴亀の庭」が広がっています。

江戸時代の高名な造園家・小堀遠州が手掛けたこの庭園は、国の特別名勝にも指定されています。以心崇伝が徳川将軍家との深い関係を背景に整備したもので、徳川秀忠や3代将軍・徳川家光を迎えるために造られたと伝えられています。

一面に敷き詰められた白砂の海に、力強い石組で表現された鶴島と亀島が浮かび、その奥には蓬莱山がそびえ立つ見事な構成です。実際に方丈に座って庭を眺めてみると、派手な装飾を削ぎ落とした静寂の中に、将軍を迎えるにふさわしい凛とした格調高さと威厳が満ちていました。ただ佇んでいるだけで心が洗われ、時間が止まったかのような美しさに思わずうっとりと見入ってしまいました。

特別拝観で出会う、光の計算と文化財の迫力

今回の訪問では運良く特別拝観に参加することができ、20分ほどガイドによる丁寧な説明を受けながら、普段は見られない貴重な文化財をじっくり鑑賞することができました。(※写真は撮影禁止となっています)

拝観のなかで見学した「八窓席(はっそうせき)」は、国の重要文化財に指定されている茶室です。

小堀遠州の設計と伝わるこの茶室は、わずか三畳台目という限られた広さでありながら、狭さをまったく感じさせない計算し尽くされた空間でした。名前の由来通り、室内には8つの窓が巧みに配置されています。丸窓や四角い窓、高低差をつけた窓から差し込む光の角度や、切り取られる庭の新緑の風景が場所ごとに変化し、「光と景色をいかに取り込むか」という茶人の深い美意識に強く感銘を受けました。

また、八窓席の附属書院に伝わる障壁画、長谷川等伯(または長谷川派)作の「老松図(ろうしょうず)」も見事なものでした。

「老松」とは何百年も生き抜いた古松のことで、困難を乗り越える強い精神力の象徴とされています。複数の襖に描かれていますが、本来はすべてつながった1枚の巨大な景色です。近くで見ると力強い墨の線なのですが、少し離れて全体を見渡すと、まるで部屋の中に本物の巨木が立っているかのような圧倒的な迫力に包まれます。風雪に耐えてきた松の生命力が、画風を通してダイレクトに伝わってきました。

さらに印象深かった作品が「猿猴捉月図(えんこうそくげつず)」です。

長い腕を伸ばした猿が木の枝にぶら下がり、水面に映る月を必死に掴もうとしている様子が描かれています。実際に掴もうとしているのは本物の月ではなく水上の影であり、禅の世界では「実体のない幻を追い求める愚かな人間の姿」を象徴しているのだそうです。今にも落ちそうな体勢で必死になっている猿の姿にはどこか愛嬌があり、人間の哀愁と可笑しさを映し出しているようで、深く考えさせられました。

京都唯一の本格派「金地院東照宮」の衝動と感動

鶴亀の庭と特別拝観だけでもお腹がいっぱいになるほどの充実感でしたが、金地院の凄さはこれだけにとどまりません。

手入れの行き届いた広い庭園の回遊路をぐるりと歩いていくと、緑の木々の奥に鮮やかな建築が現れました。徳川家康を祀る神社「金地院東照宮」です。

家康が他界した後、その遺髪や念持仏(身近に置いていた仏像)を祀るために1628年に建立されたもので、建物自体が重要文化財に指定されています。驚いたことに、ここは「京都に現存する唯一の本格的な東照宮」なのだそうです。

建築様式は、本殿と拝殿を一体化させた「権現造(ごんげんづくり)」。日光東照宮のような極彩色の派手さこそ抑えられているものの、江戸時代初期ならではの緻密で豪華な建築美が新緑の境内に映え、予備知識なしで訪れた私はその迫力に心底びっくりさせられました。

なお、こちらの東照宮内部には狩野探幽による「鳴龍(なきりゅう)」が描かれており、天井の下で手を打つと音が反響して龍が鳴いているように聞こえる仕掛けで知られています。日光東照宮と同じような歴史的仕掛けがこの京都の地にも残されている点も、非常に興味深い見どころのひとつとなっています。

家康の威光と徳川家の歴史の重みが、京都の静寂な空気と見事に融合しており、胸が熱くなるほどの深い感動を覚えました。

旅の始まりにして最高の満足感

ふらりと立ち寄った南禅寺の塔頭でしたが、枯山水の美、計算された茶室、圧倒的な障壁画、そして荘厳な東照宮と、驚かされることばかりの連続でした。正直なところ、この金地院一箇所を巡っただけで、この日京都を訪れた満足度が最高潮に達してしまったほどです。

しかし、南禅寺周辺をめぐる旅はまだ始まったばかり。

緑深まる京都の魅力的なスポットを、次回も引き続きお届けしたいと思います。旅のつづきも、どうぞお楽しみに。


金地院

  • 所在地:〒606-8435 京都府京都市左京区南禅寺福地町86−12

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